faq

よくある質問

刑事事件関係

相続関係

借地借家関係

公益通報者保護法

個人情報保護法

刑事事件関係

刑事事件の手続はどのような流れになりますか

一般的な事件では、被疑者が逮捕、勾留され、その後、検察官により裁判所に起訴(公訴の提起、公判請求)され、公判手続が行われ結審後に判決が言い渡されます。

刑事事件の手続の時間的な流れはどうなりますか

起訴事実に争いのない事件の場合、逮捕段階で72時間、勾留段階で20日、起訴から第1回公判期日までの期間が30日程度、第1回公判期日から判決言渡期日までの期間が10日程度になります。

逮捕された被疑者はその後どうなりますか

警察官が被疑者を逮捕した場合は、48時間以内に検察官に送致し、検察官は送致を受けて24時間以内に裁判官に勾留請求します。裁判官は勾留質問を行い勾留の理由がないと認められるとき以外は、勾留状が発せられ被疑者は勾留されます。勾留期間は原則として勾留請求の日から10日ですが、例外として10日を限度に延長されます。実務的にはほとんどの事件で20日の期間、勾留されています。

勾留期間が満了となる被疑者はどうなりますか

勾留期間の満了までに検察官が公訴を提起しないときは、被疑者は釈放されますが、公訴が提起(起訴)されたときには、被疑者は被告人となり、裁判所は被告人を勾留することができます。この勾留期間は公訴提起の日から2か月ですが、継続の必要があれば1か月毎に更新することができます。

被疑者や被告人と面会することはできますか

勾留されている被疑者、被告人とは、一般の人でも原則として面会や差入れをすることができます。ただし、裁判官の判断により、罪証隠滅のおそれがあるときなどに一般の人の面会や差入れが制限されることがあります。
被疑者は、通常、警察署の留置場に収容されていますので、警察署で面会することになります。被疑者の段階では、取調べや実況見分等で面会できないことがありますので、留置場の担当者に事前に確認して面会に行ってください。
起訴されて被告人となった後は、東京拘置所に移管されることになります。起訴されて5日前後で拘置所に移されることが多いですが、移管について警察署や弁護人に確認して東京拘置所に面会に行ってください。
一般の人の面会は係官が立ち会って15分から20分程度に制限されます。どのようなことを話すか事前に準備して面会するとよいでしょう。

保釈請求はどの段階でできるのですか

公訴提起(起訴)後に裁判所に保釈の請求をすることができます。
保釈の請求は、被告人、弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹がすることができます。通常は、弁護人が保釈請求手続をします。

保釈の手続はどのような流れになりますか

保釈の手続は、保釈請求の申立て、裁判官との面接、検察官の意見聴取、裁判官からの保釈許可、保釈条件及び保証金額の内示があり、保証金を納付した後に、保釈許可決定が出されて、被告人は保釈されます。

保釈はどのような場合に認められますか

法律の規定では次の場合を除いて、保釈は認められることになります。
①起訴事実が重い罪であるとき、②重い罪で有罪の宣告を受けたことがあるとき、③常習として罪を犯したものであるとき、④罪証隠滅を疑うに足りる相当な理由があるとき、⑤被害者や証人及びその家族に危害を加える等と疑うに足りる相当な理由があるとき、⑥被告人の氏名、住居が分からないとき。
分かり易くいいますと、起訴された罪が比較的軽い罪で、前科がなく、住居や定職等があり、監督する同居家族がいる被告人は、保釈が認められ易くなります。

裁判員裁判開始前の少し古い裁判所の資料によると次のとおりです。
①通常第一審事件の勾留された人で、保釈が認められた保釈率は約15%、裁判員裁判対象罪名事件の保釈率は約5%です。
なお、②勾留されて保釈を請求した保釈請求率は約28%で、保釈請求をした人のうち保釈が許可された保釈許可率は約55%です。

概算の人数で示すと次のようになります。
通常第一審事件の勾留された人数:約65,000人
保釈を請求した人数:約18,200人
保釈が許可された人数:約10,000人

保釈には保証金が必要ですか、保証金額はいくら位ですか

保釈には保証金の納付が必要です。保証金額は基本的には150万円から200万円です。起訴された罪や被告人の資産によって違います。営利的な罪の場合には保証金額は高くなります。また、被告人に資産があれば200万円程度では逃亡防止の保証にならないので高くなります。

保釈には身柄引受書が必要ですか、身柄引受書とはどのようなものですか

保釈請求をするときには、保釈請求書とともに身柄引受書を提出します。
身柄引受書は、被告人の身柄を引き受け、被告人を十分監督して保釈許可の条件を堅く守らせ、呼び出しのときはいつでも出頭させることを記載した書面です。配偶者、親などの同居している親族が身柄引受人になることが多いです。
身柄引受人がいない場合には保釈が認められることは難しくなります。
私が扱った事案では、被告人が事件を家族に知らせたくないとの希望で、弁護人が身柄引受人となって身柄引受書を提出しましたが、裁判官から弁護人が身柄引受人では保釈許可は出せないといわれ、被告人も親に連絡することを了承して身柄引受人になってもらったことがあります。その事案では、保釈条件として、東京の隣接県の親の住居が制限住居に指定されました。

公判の裁判手続はどのように進められるのですか

起訴された事実に争いのない事件の場合には、第1回公判期日に、まず、①冒頭手続、裁判官から被告人に人定質問があり、検察官の起訴状朗読、裁判官から被告人に黙秘権の告知、被告人及び弁護人の起訴事実についての認否の陳述、その後に、②証拠調べ手続、検察官の冒頭陳述、検察官の証拠調べ請求、それに対する弁護人の意見、検察官の請求証拠の取調べ、情状証人の証人調べ、被告人質問、③弁論手続、検察官の論告求刑、弁護人の弁論、最後に、裁判官から被告人に意見陳述の機会が与えられ、結審します。時間としては30分から40分ほどです。第2回公判期日に判決が言い渡されます。判決期日は7日から10日ほど後になります。判決の言渡しの時間は5分ほどです。
事実関係を争う否認事件、被告人の責任能力が争点になる事件、組織的な事件で被告人や証人が多数の事件など複雑な事件の裁判手続は長期になりますが、基本的な手続事項としては同様です。

有罪の判決を言い渡された被告人はどうなりますか

拘禁刑の有罪の判決を言い渡された被告人は、控訴期間に控訴しなければ判決が確定し、刑事施設(刑務所)に収容されて刑を受けることになります。
保釈中の被告人は、有罪判決により保釈の効力は失われ、刑事施設(拘置所)に収容され、判決が確定すれば刑事施設(刑務所)に収容されて刑を受けることになります。
控訴の提起期間は判決の宣告日から14日です。控訴をするには、高等裁判所宛の控訴の申立書を第1審裁判所に差し出します。拘置所に収容されている被告人は拘置所の担当者に控訴する旨を伝えれば、控訴の手続をしてもらえます。

裁判員裁判手続とはどのように進められるのですか

裁判員裁判は、殺人事件、強盗致傷事件、現住建造物放火事件などの死刑や無期懲役の法定刑のある事件等が対象になり、裁判官3人と一般人から選出された6名の裁判員によって審理されます。
刑事事件の手続としては、捜査段階の進行は通常の事件とほぼ同様です。起訴後の手続では、争点や証拠の整理を行い公判裁判の進行計画を決めるための公判前整理手続が行われます。以前から重大な事件や複雑な事件については事前準備手続がありましたが、公判前整理手続の新設により法律でどのような内容の手続を行うか明確に規定されました。裁判員裁判では公判前整理手続に1年ほどかかることが多く、裁判所は弁護士に早い進行を求めていましたが、報道される事件では2年、3年かかっている事件もあります。公判前準備手続において公判裁判の進行計画が決まると公判手続が開始されます。
公判手続は、原則として連日開廷になります。起訴事実に争いのない事件では、3回ほどの審理期日で結審して、その後の公判期日で判決が言い渡されます。起訴事実を争う否認事件、被告人の責任能力が争点になる事件等では、週に3、4日審理期日を設け、判決までに1か月、2か月かかる事件も報道されています。

人質司法とはどのようなことですか

被告人が保釈を請求しても起訴事実を否認している場合には、罪証隠滅のおそれがある等との理由で保釈が認められないことが多いです。起訴事実を認めれば保釈を許可するが、否認すれば保釈を認めないとの保釈実務の実体は、事実上、被告人の自白を強要するものといえます。このような実体を捉えて、被告人の身柄を人質にしている人質司法と批判されています。
冤罪事件として報道された大河原化工機の事件では、勾留中に癌で体調を悪くした相談役の方が、保釈請求が認められず長く勾留され、その後に死亡しています。まさに人質司法の実体です。警察、検察の対応が強く批判されましたが、保釈を許可しなかった裁判官の判断にも問題があります。

起訴状一本主義、予断排除の原則とはどのようなことですか

戦前の刑事裁判においては、検察官が公訴を提起するときに、裁判所に起訴状とともに捜査により収集した証拠となる書類や物を提出していました。裁判官は公判が開かれる前に、これらの書類や物を見て予め有罪か無罪かの心証を形成して裁判に臨みました。そうしますと、起訴され公判手続前に既に有罪、無罪が決められており、公判手続は形式的、儀式的なものになり、被告人の無罪推定の原則は機能しません。
戦後の新憲法の下で刑事訴訟の公正を図るために、検察官が公訴を提起するときに、裁判所に起訴状一本だけを提出し、裁判官に事件について予断を生じさせるおそれのある書類や物の添付、またはその内容の引用を禁止し、裁判官の予断を排除しました。これが起訴状一本主義、予断排除の原則です。

調書裁判、自室証拠調主義とはどのようなことですか

刑事裁判では公判廷における証拠調べが重要な手続になります。公判廷で直接、証人の証言や鑑定人の意見を聞き、有罪か無罪かの心証を形成することが本来の裁判のあり方です。しかし、実際の刑事裁判では、警察官や検察官が作成した供述調書や実況見分調書などの調書の要旨のみが、検察官により早口で読み上げられ証拠調べが行われ、証人が証言し、鑑定人が意見の述べることは多くありません。このような実体から調書裁判と批判的にいわれています。
公判廷は、本来は裁判官が有罪か無罪かの心証を形成する場ですが、調書裁判になると、裁判官は公判廷ではなく裁判官室で調書を読んで心証を形成し、有罪か無罪かを判断することになり、自室証拠調主義になっています。
裁判員裁判では、一般人の裁判員も参加しますので、調書によってではなく、公判廷で分かり易く証拠調べを行い、心証を形成するために、できるだけ証人の証言や被告人の供述により証明することが必要になります。

精密司法とはどのようなことですか

日本の刑事裁判の特徴として、起訴された犯罪事実についてはもちろん、犯行に関連する背後関係、事件に関連する行動等が詳しく調べられ、被告人の犯行動機や情状等も詳しく調べられ、証拠として公判に提出されます。そのような証拠に基づいて、裁判所は詳細な事実認定を行い長文の判決書を作成します。このことから精密司法と指摘されています。
このような精密司法については、日本の刑事裁判の有罪率が99%、98%ほどであることから肯定的に評価する見方もありますが、有罪か無罪か、有罪の場合にどのような刑が妥当かを判断する刑事手続としては過剰なことではないかとの指摘もあります。また、精密司法により、取調べでの自白の強要、調書を重視した審理、裁判審理の長期化を招いているとの指摘もあります。
裁判員裁判では、有罪か無罪かの判断と有罪の場合にどのような刑が妥当かの判断に焦点を合わせて、公判廷の裁判審理を分かり易く迅速に行う必要があります。したがって、従前のような調書中心の審理から公判廷で証言等に基づく的を絞った審理が行われる必要があります。

相続関係

相続人になるのは誰ですか

相続人の範囲と相続の順序(887条、889条、890条)は、亡くなった人(被相続人)の配偶者と被相続人の①子、②直系尊属(父母)、③兄弟姉妹の順になります。

被相続人に子がいる場合には、配偶者と子、配偶者が死亡していれば子だけが相続人になります。

被相続人に子がいない場合には、配偶者と父母、配偶者が死亡していれば父母だけが相続人になります。

被相続人に子、父母がいない場合には、配偶者と兄弟姉妹、配偶者が死亡していれば兄弟姉妹だけが相続人になります。

相続分はどのように決められていますか

配偶者と子等がいる場合にの法定相続分(900条)は以下のとおりです。
①配偶者と子が相続人 各2分の1
②配偶者と直系尊属が相続人 3分の2、3分の1
③配偶者と兄弟姉妹が相続人 4分の3、4分の1
④子、直系尊属、兄弟姉妹が数人あるとき 各自の相続分は相等しい

例えば、配偶者と子2名の場合、相続分は配偶者が2分の1、子は各4分の1になります。
遺言による相続分の指定(902条)がある場合はその指定により相続分が決まり、法定相続分と異なることになります。また、特別受益者の相続分(903条)、寄与分(904条の2)の規定により相続分は異なることになります。

相続関係を証明するためにどのような書類が必要ですか

被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等一式、住民票又は戸籍附票と相続人の戸籍謄本、住民票又は戸籍附票が必要な書類です。
相続関係を分かり易くするために相続関係図を作成します。また、法務局の法定相続情報証明制度(法定相続情報一覧図)の利用が考えられます。

 

相続の承認、放棄等とはどのような手続ですか

相続人が、自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、相続について、単純承認、限定承認または相続放棄をしなければなりません。
3か月以内に限定承認も相続放棄もしない場合には、単純承認(920条)になります。相続財産を処分したときも同様です。
相続放棄(938条等)は家庭裁判所の手続が必要です。相続放棄した場合には初めから相続人とならなかったものとみなされます。
限定承認(922条等)した場合には、相続により得た財産の限度で被相続人の債務等を弁済する責任を負います。限定承認は家庭裁判所の手続が必要であり、相続人の全員が共同してする必要があります。

遺言書ではどのようなことを定めることができますか

遺言書は、遺言事項として相続分の指定(902条)のほかに、遺産分割の方法の指定(908条)、遺贈(964条、986条等)、遺言執行者の指定(1006条)等を定めることができます。遺言書は被相続人の意思に基づいた相続を実現させるものです。

遺言書にはどのような種類がありますか

遺言書の種類として、自筆証書遺言(968条)、公正証書遺言(969条)、秘密証書遺言(970条)等が定められています。このうち、自筆証書遺言と公正証書遺言が一般的です。

自筆証書遺言はどのような方式のものですか

自筆証書遺言は、遺言者が全文、日付、氏名を自書(自分で手書)して、これに印を押さなければなりません。重要な書面ですので印は実印を押すのが通常です。認印等では疑義がもたれ紛争の原因になります。また、自筆証書遺言の遺言書は家庭裁判所での検認手続が必要です。
自筆証書遺言の方式の簡易化が図られ、財産目録は自書しなくてもよくなりました。ただし、通帳のコピーやパソコンで作成した財産目録には全ての頁に(両面の場合は両面)に署名し、印を押さなければなりません。なお、法務局の遺言書保管制度(遺言保管法)が新設されています。

公正証書遺言とはどのような方式のものですか

公正証書遺言は、証人2人以上の立会いにより、公証人が遺言者の口述を筆記し、遺言者及び証人に読み聞かせる等、筆記の正確なことを確認した後に、各自が署名し、印を押し、公証人が方式に従って作成した旨を付記して、署名し、印を押します。作成費用がかかりますが信頼が高い遺言書です。

作成した遺言書は撤回、変更はできますか

遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回、変更(1022条等)することができます。
後に新しい遺言書を作成したときには、それと内容が異なる前の古い遺言書は撤回、変更されたものとみなされます。

 

遺産分割はどのような手続で行うのですか

遺言書で相続人の誰がどの財産を相続するか決まっている場合には、そのとおりに遺産分割すればいいのですが、遺言書がない場合や遺言書があってもそこまで決められていない場合には、相続人間で遺産分割の協議をして合意する必要があります。遺産分割の協議がまとまり合意ができたときには遺産分割協議書を作成し、各自が署名捺印をします。不動産の相続登記手続などのために実印で捺印し、印鑑登録証明書を添付します。
遺産分割協議ができない場合又は協議しても合意できない場合には、家庭裁判の遺産分割調停(審判)手続を利用することになります。なお、相続財産の帰属、遺言無効の係争は別の訴訟事件になりますので注意が必要です。

遺産分割にはどのような方法がありますか

遺産分割の方法には、現物分割、換価分割、代償分割、共有分割の方法があります。現物分割が可能であればこれが原則的な分割方法になります。特定の遺産の所得を希望する相続人の場合、他の相続人に金員を支払ってその遺産を取得する方法が代償分割です。遺産を売却して売買代金を分けるのが換価分割です。共有分割は遺産の持分でそのまま共同して所有する方法で、ある意味で分割の先延ばしになります。

相続税はどのように計算するのですか

相続税の計算の概要は以下のとおりです。
 ①相続財産の評価額-②相続債務の評価額=③の価額

 ③の価額-基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人の数)が相続税の課税対象金額になります。
この金額がマイナスの場合には相続税は課税されません。プラスの場合にはこの金額に課税税率を掛けて相続税額を計算します。
相続財産の評価額について、小規模宅地の特例等の確認(相続税申告が必要)が必要になります。また、みなし相続財産である生命保険金、死亡退職金等(基礎控除500万円×法定相続人の数)を確認する必要があります。
相続税の総額を計算し、個別に取得財産割合に按分し、各自の税額の調整、配偶者の税額軽減等の確認をします。なお、相続財産は連帯債務ですので支払をしない相続人がいた場合には、他の相続人が納付を請求されることになりますので、注意が必要です。

相続税の申告はどうしたらいいのですか

相続税の申告期限は相続があったことを知った日から10か月以内です。
上記の①相続財産の評価額-②相続債務の評価額=③の価額が、基礎控除額より少ないときには相続税の申告書を提出する必要はありませんが、計算が微妙な時には申告書を提出した方が安心です。
なお、小規模宅地の特例の適用を受けるためには相続税の申告書の提出が必要です。また、配偶者の優遇税制により税額軽減を受ける場合も同様ですので、注意してください。

遺留分とはどのような制度ですか

遺留分は、被相続人の遺言による相続分の指定等によっても変更することができない、各相続人が相続財産から受け取れる相続分です。以前は遺留分減殺制度として相続財産の分割を請求する制度でしたが、改正により遺留分侵害額請求制度となり遺留分侵害に相当する金銭の支払を請求する制度になりました(1046条)。

遺留分権利者と遺留分の割合はどうなりますか

遺留分権利者は、兄弟姉妹以外の相続人である配偶者と子または直系尊属(被相続人の父母等)です(1042条)。
遺留分の割合は、以下のとおりです(1042条)。

遺留分を算定するための財産の価額に、次の掲げる区分に応じてそれぞれ定める割合を乗じた額を受けます。
①直系尊属のみ相続人の場合 3分の1
②上記以外の配偶者と子または直系尊属が相続人の場合 2分の1
③相続人が数人いるときは法定相続分による各自の相続分を乗じた割合

【例】
配偶者と子2名の場合の遺留分
配偶者 1/2×1/21/4 子 1/2×(1/2×1/2)=1/8

配偶者と直系尊属2名の場合の遺留分
配偶者 1/2×2/31/3 直系尊属 1/2×(1/3×1/2)=1/12

直系尊属2名の場合の遺留分
直系尊属 1/3×1/21/6

遺留分の財産価額はどのように算定するのですか

遺留分を算定するための財産価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額に、その贈与した財産の価額を加え額から債務の全額を控除した額です(1043条)。

(遺留分算定財産価額)=(被相続人の相続開始時の財産の価額)+(贈与した財産の価額)-(被相続人の債務の全額)

注、(贈与した財産の価額)については、①第三者に対する贈与の価額は原則1年以内のもの(遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与については、1年前より前でも加えます。)②相続人に対する贈与の価額は10年以内のもの(婚姻、養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限ります。)が加算されます(1044条)。

遺留分侵害額はどのように算定するのですか

遺留分侵害額は、1042条の規定による遺留分から、①及び②に掲げる額を控除し、これに③に掲げる額を加算して算定します(1046条2項)。

1042条の規定による遺留分は、16で算定した(遺留分の算定財産価額)×(遺留分の割合)=(遺留分)になります。

遺留分から、
①遺留分権利者が受けた遺贈又は特別受益(903条1項に規定する婚姻、養子縁組のため、生計の資本として受けた贈与)の価額
②900条から902条等の規定により算定した相続分に応じて遺留分権利者が取得する遺産の価額を控除します。
③被相続人が 相続開始時において有した債務のうち、899条の規定により遺留分権利者が承継する債務(「遺留分権利者承継債務」)の額を加算します。

    (遺留分の算定財産価額)×(遺留分の割合)=(遺留分)
    (遺留分)- ①(遺留分権利者が受けた遺贈又は特別受益の価額)
                       - ②(遺留分権利者が取得する遺産の価額)
                       + ③(遺留分権利者が承継する債務額)
                       = (遺留分侵害額)

(設問) Xには、妻Yと子A、Bがいました。Xが死亡し、相続財産は自宅の土地建物(評価額5000万円)と預金1100万円であり、債務は100万円でした。Xは公正証書遺言書で妻Yに土地建物と預金を相続させる旨の遺言をしていました。Xは生前に子Aに500万円、子Bに300万円を贈与していました。子A、Bの遺留分侵害額はいくらになるでしょうか

            遺留分の算定財産価額=6800万円です。
            (相続開始時の財産の価額)5000万円+1100万円-100万円
                                                           =6000万円
           (贈与した財産の価額)  +800万円

子Aの遺留分額 6800万円×(1/2×(1/2×1/2))=850万円
    遺留分侵害額 850万円-500万円=350万円

子Bの遺留分 6800万円×(1/2×(1/2×1/2))=850万円
    遺留分侵害額 850万円-300万円=550万円

遺留分侵害額請求権はいつまでに行使しないと消滅しますか

遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅します。
相続開始の時から10年を経過したときも、同様に時効によって消滅します(1048条)。

遺留分侵害額請求は誰が誰に対してすることができますか

遺留分権利者及びその承継人は、相続財産を取得して遺留分を侵害した受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人が含まれます)又は相続財産から贈与を受け遺留分を侵害した受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができます(1046条1項)。

遺留分を放棄することはできますか

相続の開始後に遺留分を放棄することができます。遺留分放棄の意思表示をすればその効力を生じます。
相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生じます(1049条1項)。
共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼしません(1049条2項)。

平成30年民法等改正の相続に関する新ルールはどのような内容ですか

① 配偶者居住権(1028条1項)の制度が創設されました。
配偶者が相続財産の自宅に居住している場合に、配偶者が配偶者居住権を取得することにより、無償で居住を継続するとともに、その後の生活費を確保するためにその他の財産を取得できるように配慮した制度です。

② 婚姻期間が20年以上の夫婦間における配偶者に対する居住用不動産の生前贈与等に関する優遇措置が設けられました。
配偶者に居住用不動産の生前贈与等がされた場合に、居住用不動産の生前贈与分について相続財産とみなす必要がないとの優遇措置により、配偶者の最終的な取得額が増えることになります。

③ 預貯金債権の払戻(909条の2)の制度が創設されました。
各相続人が、遺産分割前でも一定の範囲内で預貯金の払戻しができる制度です。
改正前は、預貯金債権は遺産分割の対象財産であり、相続人の単独での払戻しはできませんでした(最高裁大法廷平成28年12月19日決定)。
改正後は、預貯金の一定額に家庭裁判所の判断を経ずに単独で払戻しができることになりました。一定金額は、預貯金債権額(口座基準)×1/3×法定相続分です。ただし、1銀行からの払戻しは150万円までに限定されています。
保全処分の要件緩和、一定金額を超える仮払いの必要性があると認められる場合には、他の共同相続人の利益を害しない限り、家庭裁判所の判断で仮払いが認められるように要件が緩和されました(家事事件手続法改正)。ただし、家庭裁判所に本案である遺産分割調停・審判事件が係属していることが前提となります。

④ 自筆証書遺言の方式が緩和(968条2項)されました。
自筆証書遺言について、財産目録についても手書き(自書)で作成する必要がありましたが、改正により、財産目録については手書き(自書)で作成する必要がなくなりました。パソコンで財産目録を作成することや通帳のコピーを添付することも可能になりました。この場合に、財産目録には偽造防止のために各頁(両面の場合には両面)に署名し、印を押すことが必要です。

⑤ 法務局における自筆証書遺言の保管制度が創設されました(遺言書保管法)。
自筆証書遺言を作成した者は、法務大臣の指定した法務局(「遺言書保管所」)に遺言書の保管を申請することができるようになりました。
遺言者の死亡後に、相続人らは、全国の遺言書保管所において、遺言書が保管されているかどうかを調べること(「遺言書保管事実証明書」の交付請求)、遺言書の写しの交付を請求すること(「遺言書情報証明書」の交付請求)ができ、また、遺言書を保管している遺言書保管所において遺言書を閲覧することもできます。
遺言書の閲覧や遺言書情報証明書の交付がされると、遺言書保管官は、他の相続人等に対し遺言書を保管している旨を通知します。
遺言書保管所に保管されている遺言書については、家庭裁判所の検認が必要ではなくなりました。

⑥ 遺留分制度が見直され、「遺留分減殺請求権」から「遺留分侵害額請求権」(1046条)の制度になりました。
改正前は、遺留分を侵害された者は、相続、遺贈や贈与を受けて遺留分を侵害した者に対し、遺留分減殺請求権を行使することによって、相続財産の共有状態が生ずることになりました。また、その共有割合は相続財産の評価額等を基準に決まるため、分母・分子とも極めて大きな数字となりました。その結果として、事業承継の支障となり、また、持分権の処分に支障が生ずる等の問題点がありました。
改正後は、遺留分を侵害された者は、相続、遺贈や贈与を受けて遺留分を侵害した者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭を請求することになりました。また、請求を受けた者が金銭を直ちに準備することができない場合には、裁判所に対し、支払期限の猶予を求めることができます。

⑦ 相続人以外の親族の「特別の寄与」(1050条)の制度が創設されました。
相続人以外の被相続人の親族が、無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした場合に、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(「特別寄与料」)の支払を請求することができる制度です。
改正前からある寄与分(904条の2)の制度は、相続人が、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与した者があるときは、寄与分を控除したものを相続財産とみなし、法定相続分に寄与分を加えた額がその者の相続分となる制度でした。
改正前は、被相続人と同居していた相続人の配偶者は、相続人ではないので、被相続人の療養看護等を行い貢献していても寄与分は認められませんでした。「特別の寄与」の制度により相続人ではない被相続人の親族の貢献が特別寄与料として評価されることになりました。

令和3年民法等改正の相続に関する新ルールはどのような内容ですか

【1】 遺産分割に関する期間制限(904条の3)の制度が設けられました。

ア 相続開始時から10年を経過した後にする遺産分割は、具体的相続分(生前贈与等の特別受益や寄与分)ではなく、法定相続分(又は遺言による指定相続分)によって画一的に行われることになります。
例外は、①10年経過前に、相続人が家庭裁判所に遺産分割請求をしたとき、②10年の期間満了前6か月以内に、遺産分割請求をすることができないやむを得ない事由が相続人にあった場合に、当該事由消滅時から6か月経過前に、相続人が家庭裁判所に遺産分割請求をしたときです。

早期の遺産分割を促し、相続関係の長期間の経過により法律関係が複雑化し、遺産の管理・処分が困難になることを防ぐために、期間制限が設けられました。
なお、10年経過後も、相続人全員が合意すれば、具体的相続分による遺産分割を行うことは可能です。

イ この新ルールは、令和5年4月1日から適用開始になりましたが、令和5年4月1日までに開始した相続についても適用されます。
令和5年4月1日までに開始した相続について新ルール適用の猶予期間(令和10年3月31日)の適用の有無は次のとおりです。

①令和5年4月1日時点で相続開始から5年以内の場合には、猶予期間の適用はなく、基本どおりに相続開始から10年の期間制限が適用されます。
②令和5年4月1日時点で相続開始から5年超10年未満の場合には、猶予期間の適用があり、令和10年3月31日まで期限が猶予されます。
③令和5年4月1日時点で相続開始から10年以上経過の場合には、猶予期間の適用があり、令和10年3月31日まで期限が猶予されます。

 

【2】 不動産(土地・建物)の相続登記が義務化されました。

ア 相続人は、不動産(土地・建物)を相続したことを知った日から3年以内に相続登記をすることが法律上の義務となり、法務局(登記所)に相続登記の申請をする必要があります(不動産登記法)。
相続登記を義務化した理由は、相続登記がされないため、不動産登記簿を見ても所有者が分からない「所有者不明土地」が全国で増加し、環境悪化や公共事業の阻害などの社会問題となっていることから、その対策として相続登記が義務化されました。

遺産分割により不動産を取得した場合にも、遺産分割をした日から3年以内に相続登記をする必要があります。
正当な理由がないのに相続登記をしない場合には、10万円以下の過料が科されます。

なお、相続登記の義務化は、令和6年4月1日から開始になりましたが、令和6年4月1日より前に相続した不動産も相続登記の義務化の対象になります。この場合には、3年間の猶予期間があり、令和9年3月31日までに相続登記をする必要があります。

イ 相続人申告登記制度が創設されました。
相続が開始した後、早期の遺産分割をすることが難しい場合等に、「相続人申告登記」手続を法務局でとることによって、相続登記の義務を果たすこともできます。「相続人申告登記」手続は、法務局に戸籍などを提出して、自分が相続人であることを申告し、登記簿に反映させる簡易な手続です。ただし、正式な相続登記とは異なりますので、相続登記と同様の所有者であることを第三者に対抗(主張)することができる法的な効力は認められていません。

借地借家関係

借地借家法とはどのような法律ですか

借地借家法は、建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権(借地権)の存続期間、効力等、建物の賃貸借(借家)の契約の更新、効力等に関し特別の定めをするとともに、借地条件の変更等の裁判手続に関し必要な事項を定めた法律です。平成3年10月4日に制定され、平成4年8月1日から施行されています。

借地借家法と借地法、借家法とはどのような関係になるのですか

借地借家法が制定、施行される前には、借地法、建物保護法、借家法により、借地権者や借家人の権利が保護されていました。これらの法律を廃止して借地借家法が制定されました。
経過措置の原則として、借地借家法の規定は、特別の定めがある場合を除き、借地借家法の施行前に生じた事項にも適用されます。ただし、廃止前の建物保護法、借地法、借家法の規定により生じた効力は妨げられません。
特別の定めとして、借地借家法の施行前に設定された借地について、借地上の建物の朽廃による消滅、借地契約の更新、建物の再築による借地権の延長等や、借家契約の更新拒絶の通知及び解約の申入れに関しては、なお従前の例によると定められています。これらの事項については借地法や借家法の規定が適用されることになります。

建物賃貸借(借家)の賃料の増額や減額の請求はできますか

借地借家法は、一定の要件に基づいて賃料(借賃)の増額請求や減額請求を認める規定(32条)があります。その要件については、「土地や建物に対する租税その他の負担の増減により、土地や建物の価格の上昇や低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。」と定めています。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その特約の定めに従うことになります。

借地についても、借地借家法に同様の規定(11条)がありますので、借地の地代等についても、同じような要件に基づいて増額請求や減額請求が認められます。

賃料の増額請求等はどのようにするのですか

賃貸人が賃料の増額請求をするときには、まず賃借人に賃料増額の通知(意思表示)をします。賃借人が異論を述べずに増額された賃料を支払ったときには、増額した賃料で合意されたことになります。
賃借人が異論を述べた場合には、当事者間で協議し、合意点が見つかれば解決することになります。しかし、当事者間の協議が調わないときには、増額請求を受けた借主は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める賃料を支払えばよいことになっています。ただし、裁判が確定した場合に、既に支払った額が裁判で正当と認められた額に不足していれば、その不足額に年1割の割合による利息を支払う必要があります。

賃料の増額請求等の当事者間の協議が調わないとき、賃料の増額を請求した賃貸人はどうすればいいのですか

賃貸人は、当事者間の協議が調わないときには、簡易裁判所に賃料増額請求の調停を申立てることになります(民事調停法24条の2,同条の3)。簡易裁判所に賃借人を相手方とする調停の申立書を提出し、調停期日に調停委員が当事者双方から主張等を聞いて話し合いを進め、調停が成立すれば調停調書が作られます。調停が不調になったときには、地方裁判所に賃借人を被告とする賃料増額請求の訴訟を提起することになります。

賃料増額請求の調停はどのように進められますか

簡易裁判所に賃料増額請求の調停の申立書を提出します。申立てから1か月程度で第1回の調停期日が入ります。調停期日では調停委員が当事者双方から交互に事情を聞き、妥協点を見つけるための話し合いを進めます。
調停期日は1か月に1回ほど設けられ、3回か4回くらいの調停期日に調停委員会の調停案が示され、当事者双方が検討し、次回期日に当事者双方が了承すれば調停が成立し、調停調書が作成されます。

賃料増額請求の訴訟はどのように進められますか

地方裁判所に賃料増額請求の訴状を提出します。訴状の提出から1か月ほどで第1回の弁論期日が開かれます。弁論期日には当事者双方から訴状、答弁書、準備書面の陳述、証拠書類の提出手続が行われます。一般的な進行としては、3回か4回程度の弁論期日を経て当事者双方の主張等が出そろったころに、不動産鑑定の鑑定手続を行い、不動産鑑定書が提出された段階で、和解を試み、和解が成立しないときには、判決に至ることになります。

賃料増額請求の調停と訴訟のメリット、デメリットはどのような点でしょうか

調停のメリットは早期に解決が図られる点と弁護士費用が比較的安く抑えられる点です。訴訟のメリットは裁判所の判決により正当な賃料が明確になる点ですが、デメリットは解決に時間がかかる点と訴訟に要する費用が高くなることです。時間の点では判決に至るまでに1年ほどかかることもあります。訴訟に要する費用は、弁護士費用のほかに賃料の鑑定費用がかかります。鑑定費用は当事者が各々30万円程度負担することになります。
メリットとデメリットを考えると調停でまとめる方が当事者双方に有利だと思います。

建物の賃貸人から借家契約の更新拒絶の通知書等が届いたときはどのようにしたらよいでしょうか

借家契約に賃貸借期間を2年とする期間の定めがある場合に、賃貸人が期間満了により借家契約を終了させたいときには更新拒絶の通知をする必要があります。更新拒絶の通知は、期間満了の1年前から6か月前までにする必要があります(26条)。また、賃貸人による更新拒絶の通知は、正当の事由があると認められる場合でないとすることができません(28条)。その点で、借家人の権利は強く保護されています。

賃貸人から更新拒絶の通知書等が届いたとしても慌てる必要はありません。通知書に回答する義務はありませんが、意思を明確にするために、更新拒絶の通知に正当事由がない旨の回答書を郵送すればよいと思います。
賃貸借期間の定めのない契約の場合、賃貸人の解約の申入れの日から6か月を経過することにより契約は終了しますが、解約の申入れにも正当事由の要件が必要です(27条、28条)。解約の申入れの通知書が届いたときも、更新拒絶の通知書が届いたときと同様です。

借家契約、借地契約の法定更新とはどのような制度ですか

借家契約に賃貸借期間の定めがある場合、当事者が更新拒絶の通知等をしなかったときは、法律の規定(26条)により、契約を更新したものとみなされます。このことを法定更新といいます。法定更新では、従前の契約と同一の条件で更新したことになります。ただし、賃貸借期間については、期間の定めのないものになります(26条1項)。なお、賃貸人の更新拒絶の通知には正当事由が認められることが必要です。

当事者が更新拒絶の通知等をした場合であっても、賃貸借期間が満了した後、賃借人が借家の使用を継続する場合において、賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、法定更新になります(26条2項)。

借地契約にも法定更新の制度があります。借地契約では、借地権者の更新請求等として規定されており、借地権者が契約の更新を請求したときは、建物がある場合に限り、法定更新になり、従前の契約と同一の条件で更新したものとみなされます(5条1項)。なお、借地権設定者が借地権者の更新請求に異議を述べるには、正当事由が認められることが必要です(6条)。

借地権の存続期間が満了した後、借地権者が土地の使用を継続するときも、建物がある場合に限り、法定更新になります(5条2項)。
更新後の期間は、借地権設定後の最初の更新のときは20年、その後は10年と定められています(5条1項、4条)。

借家契約の更新拒絶通知、解約申入れの要件の「正当の事由」とはどのような内容ですか

借家契約の場合に「正当の事由」は、「建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して」判断されます(28条)。

基本的には個別事案ごとに上記の事由を認定、検討して判断されることになりますので、予測が難しい面があります。一般論としては、賃貸人の建物の利用を必要とする事情が切実であればあるほど正当事由は認められ、賃借人の建物の利用を必要とする事情が切実でなくなっているほど正当事由は認められることになります。

実際の判断においては、正当事由を補完する要素である財産上の給付(立退料・立退補償)の申出を考慮して判断されることが多いです。例えば、築50年を経過する耐震基準を充たしていない建物について、賃貸人が建物の建替えのために賃借人に契約の更新拒絶を通知した事例では、建替えの必要性が認められるとしても、通常、それだけでは正当事由は認められません。賃貸人の建替えには、土地の有効利用、新建物による収益増加を図るという経済上の目的があります。その点からすれば、賃借人の損失や負担を考慮して、立退補償が必要と考えられるからです。
借地契約の場合にも更新拒絶の要件として「正当の事由」の規定(6条)があります。

「正当の事由」の補完のための立退補償の内容としてどのようなものがありますか

立退補償については、賃借人が立退きによりどのような損失や負担があるかという点と、当事者間の負担の公平を考慮するという点から考える必要があります。立退補償の内容としては、移転費用、営業補償、差額賃料の補償、借家権価格などが裁判上問題になることが多いようです。

移転費用とは引越費用、移転通知費用などの実費です。
営業補償とは、移転による営業の廃止や一時停止等による営業利益の損失を補償するものです。業態により営業に与える影響等は異なりますので算出は難しいです。裁判例では、移転前の営業利益と移転後に予想される営業利益の差額の2年分を営業補償として認めたものもあります。
差額賃料の補償とは、現在の賃料と移転後の賃料の差額を補償するものです。裁判例では、差額賃料の2年分を差額賃料の補償として認めたものもあります。
借家権価格とは、一般に更地価格×借地権割合(0.6~0.7)×借家権割合(0.2~0.3)で算出した価格をいいます。借家権価格については議論があり、否定する裁判例や採用しない裁判例もあります。
その他に、店舗、レストラン、スタジオ等の内装に多額の費用を要している場合には、立退く部屋の内装に要した費用や移転先の部屋の内装に要する費用が立退補償の対象として問題になります。
そのほかにも検討が必要なものがあるでしょう。また立退きの精神的負担等も考慮が必要な場合もあるでしょう。
もっとも、これらのものが全て補償されるわけではなく、立退補償は正当事由の補完的な要素ですから、正当事由との比較衡量で補償額が判断され、その際には当事者の負担の公正も考慮されることになります。補償の内容にもよりますが算出された額の3分の2、2分の1が補償額として認定されることもあります。

定期建物賃貸借(定期借家)とはどのような制度ですか、どのような点に注意が必要ですか

定期建物賃貸借(定期借家)とは、期間の定めがある建物の賃貸借契約について、期間満了時に契約の更新がない旨を定めた賃貸借です。定期借家契約は、「公正証書等の書面」によって契約をする必要があります。公正証書でなくても私署証書(私人間の契約書)でもよいです(38条1項)。

なお、定期借家の契約がその内容を記録した電磁記録によってされたときは、その特約は書面によってされたものとみなされます(2項)。

契約書には、定期借家契約の基本的要素である①建物賃貸借であること、②賃貸借期間、③賃貸借の当事者、④賃貸借の目的となる建物、契約の更新がなく、期間の満了により賃貸借が終了することの記載が必要です。

賃貸人は、定期借家契約を締結する前に、賃借人に対し、建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した「書面を交付して説明する」必要があります(3項)。この説明をしなければ、契約の更新がない旨の定めは無効となり(5項)、普通の借家契約になります。最も注意が必要な点です。なお、この書面についても賃借人の承諾を得て電磁的方法で提供した場合には、書面を交付したものとみなされます(4項)。

賃貸借期間ついては期間の制限はなく、50年以上の長期の期間を定めることもできます。また、1年未満の期間を定めることもできます。

定期借家契約の終了時に通知が必要です。賃貸借期間が1年以上である場合には、賃貸人は、期間の満了の1年前から6か月前までの間に、賃借人に対し、期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をする必要があります。ただし、賃貸人が通知期間の経過後、賃借人に対し、建物の賃貸借が終了する旨の通知をした場合においては、その通知の日から6か月を経過した後に、建物の賃貸借は終了することになります(6項)。なお、期間満了経過前に通知しなかったときには、契約の更新がない旨の定めは無効となるとの見解もありますので、注意が必要です。

定期借地権とはどのような制度ですか、どのような点に注意が必要ですか

定期借地権とは、存続期間を50年以上として借地権を設定する場合に、契約の更新、建物の再築による存続期間の延長及び建物買取請求権を特約で排除した借地権です。(22条1項)。

借地借家法9条は、契約の更新に関する規定(4条、5条、6条)、建物の再築による存続期間の延長に関する規定(7条、8条)に反する特約で借地権者に不利な特約は無効と規定しています。同法16条は、建物買取請求権に関する規定(13条、14条)に反する特約で借地権者に不利な特約は無効と規定しています。定期借地権は同法9条及び16条の例外として認められた制度です。

定期借地権については、「存続期間を50年以上」とだけ定められていて、特に終期について定められていませんが、法律関係を安定させ明確にするために、存続期間の終期は確定期限で定めなければならないと解されています。したがって、存続期間は50年、60年等と定めなければなりません。「60年以上」とか「永久」とする定めは許されないと解されており、このように定めた場合には、定期借地権の特約は無効となり、普通借地権として扱われることになるので注意が必要です。

定期借地権についての特約は、「公正証書による等書面」によってしなければならないと定められています。書面ですることを要件としているのは、定期借地権の特約について慎重に考え十分にその内容を理解したうえで行う機会を確保するためです。書面は、公正証書である必要はなく、私署証書(私人間の契約書)でもよいです。書面が作成されない場合には定期借地権の特約は無効となります。この場合に無効となるのは定期借地権の特約であり、普通借地権の契約として有効に成立し存続することになりますので、この点も注意が必要です。

なお、定期借地権の特約がその内容を記録した電磁記録によってされたときは、その特約は書面によってされたものとみなされます(2項)。

事業用定期借地権等とはどのような制度ですか、どのような点に注意が必要ですか

事業用定期借地権等(23条)とは、「専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除きます。)の所有を目的」とする定期借地権です。

ア 事業用定期借地権等については、二つの形態の借地権が定められています。

本条1項は、存続期間を「30年以上50年未満」として借地権を設定する場合について、契約の更新、建物の築造による存続期間の延長及び建物買取請求権を排除する旨を定めた借地権です。
本条2項は、存続期間を「10年以上30年未満」として借地権を設定する場合には、第3条から第8条まで、第13条及び第18条の規定は、適用しない借地権です。なお、「第3条から第8条まで規定」は借地権の存続期間、契約の更新、建物の再築による存続期間の延長に関する規定です。「第13条の規定」は建物買取請求権に関する規定です。「第18条の規定」は借地契約更新後の建物の再築の許可に関する規定です。

イ 本条1項と2項の規定は法律構成が異なっています。

本条1項の事業用定期借地権の規定は、22条の定期借地権の規定と同様の特約により契約の更新等を排除する法律構成をとっています。これに対して、本条2項の事業用定期借地権の規定は、特約により契約の更新を排除するという法律構成をとらず、普通借地権について認められる借地権者保護のための契約の更新、建物の再築による存続期間の延長及び建物買取請求権に関する規定を適用しないとの法律構成をとっています。本条2項の規定は、平成19年改正前の法24条が定めていた「事業用借地権」そのものにほかならないと指摘されています。

ウ 「専ら事業の用に供する建物」について、事業は営利的な活動に限らず、非営利的、公共的、公益的な活動も含むと広く解されています。

「居住の用に供するもの」は除かれるので、居宅、共同住宅、寄宿舎、社員住宅などの建物は建築できません。また一部が事業用で一部が居住用の建物も建築できません。ただ、人が起臥寝食に供される建物でも、特定の人が専用するのではない、ホテル、旅館、保養所は「事業の用に供する建物」に当たると解されています。

事業用定期借地権等についても、存続期間の終期は確定期限で定めなければならないと解されています。

エ 事業用定期借地権等の設定を目的とする契約は、「公正証書」によってしなければなりません。22条の定期借地権の特約と異なり、公正証書以外の私署証書(私人間の契約書)で契約することは認められませんので、注意が必要です。

公正証書以外の書面によって設定契約をした場合は契約は無効となります。契約が無効の場合にも、当事者が普通借地権を設定したものと推認すべき場合もありうること、特に現実に借地利用が開始、継続している場合には、このように解すべき事例が多いとの指摘があります。

借地条件の変更及び増改築の許可の裁判とはどのような制度ですか

ア 借地契約で建物の種類、構造、規模又は用途を制限する旨の借地条件がある場合に、事情の変更により借地条件と異なる建物を建てることが相当となっても、借地条件の変更について当事者間の協議が調わないときは、当事者は、借地条件の変更を裁判所に申立てることが認められます(17条1項)。

「事情の変更」とは、法令による土地利用の規制の変更、付近の土地の利用状況の変化その他の事情の変更をいいます。
借地契約で増改築を制限する旨の借地条件がある場合において、土地の通常の利用上相当とすべき増改築について、当事者間に協議が調わないときは、借地権者は借地権設定者の承諾に代わる増改築の許可を裁判所に申立てることが認められます(17条2項)。

「土地の通常の利用上相当とすべき増改築」とは、関連法規、土地の位置、広狭、周囲の土地との関係から客観的に相当である増改築をいいます。

イ 裁判所は、これらの裁判をする場合には、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、他の借地条件を変更し、財産上の給付を命じ、その他相当の処分をすることができます(3項)。また、借地権の残存期間、土地の状況、借地に関する従前の経過その他一切の事情を考慮して判断する必要があります(4項)。

借地条件の変更の裁判は借地非訟事件であり、非訟事件手続法に従ってなされます(41条、42条)。

借地契約の更新後の建物の再築の許可の裁判とはどのような制度ですか

借地契約の更新後に、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を新たに築造することにつきやむを得ない事情があるのに、借地権設定者が建物の再築を承諾しないとき借地権者は建物を再築の許可を裁判所に申立てることが認められます(18条1項)。

「やむを得ない事情」については、厳格に解すると更新後の建物の再築は困難になり、緩やかに解すると、再築の必要がないのに建物を取壊して再築することを認めることになるので、「建物の状況、建物の滅失があった場合には滅失に至った事情、借地に関する従前の経過、借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む。)が土地の使用を必要とする事情その他一切の事情を考慮して判断する」ことになります(2項)。
なお、借地契約で、借地権設定者が地上権の消滅の請求又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができない旨を定めた場合は、借地権設定者の建物の承諾がなくても、借地権者は建物を再築することができますので、この許可の申立ての対象から除かれます。

裁判所は、この裁判をする場合には、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、延長すべき借地権の期間として第7条第1項(建物の再築による借地権の期間の20年延長)の規定による期間と異なる期間を定め、他の借地条件を変更し、財産上の給付を命じ、その他相当の処分をすることができます(1項)。また、建物の状況、建物の滅失があった場合には滅失に至った事情、借地に関する従前の経過、借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む。)が土地の使用を必要とする事情その他一切の事情を考慮して判断する必要があります(2項)。

借地契約の更新後の建物の再築の許可の裁判は借地非訟事件であり、非訟事件手続法に従ってなされます(41条、42条)。

土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可の裁判とはどのような制度ですか

借地権者が借地上の建物を第三者に譲渡しようとする場合に、借地権者は第三者に借地権を譲渡し又は借地を転貸する許可を裁判所に申立てることが認められます(19条)。

この申立ては、「第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないとき」に認められます。

裁判所は、この許可を与える場合に、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができます(1項)。また、この裁判をするには、賃借権の残存期間、借地に関する従前の経過、賃借権の譲渡又は転貸を必要とする事情その他一切の事情を考慮して判断する必要があります(2項)。

借地権設定者は、裁判所が定める期間内に、建物の譲渡及び借地権の譲渡又は土地の転貸を受ける旨の申立てをすることができます。この申立てがあったときは、裁判所は、相当の対価及び転貸の条件を定めて、これを命ずることができます(3項)。

土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可の裁判は借地非訟事件であり、非訟事件手続法に従ってなされます(41条、42条)。

公益通報者保護法

公益通報者保護法の目的は何ですか

公益通報者保護法は、公益通報をしたことを理由とする公益通報者の解雇の無効及び不利益な取扱いの禁止等並びに公益通報に関し事業者や行政機関がとるべき措置等を定めることにより、公益通報者の保護を図るとともに、国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法令の規定の遵守を図り、国民生活の安定、社会経済の健全な発展に資することを目的としています(1条)。

公益通報とはどのような通報をいうのですか

「公益通報」とは、役務提供先の事業者に使用され、事業に従事する労働者等(通報の主体)が、不正の目的ではなく、役務提供先の事業者等(行為主体)の犯罪行為やその他の法令違反行為(通報対象事実)が生じ、又はまさに生じようとしている旨(通報の内容)を、役務提供先等又は権限を有する行政機関等、その他の外部通報先に通報することをいいます。

通報の主体(通報する人)の「労働者等」とはどの範囲の人が含まれますか

通報の主体の「労働者等」とは、次の人達です(2条1項の各号)。

① 労働者(労基法9条の労働者)又は労働者であった者(1号)
② 派遣労働者又は派遣労働者であった者(2号)
③ 請負契約その他の契約に基づき事業を行い又は行っていた場合には、事業に従事する取引先事業者の労働者、派遣労働者等(3号)
④ 役員(4号)

労働者は、労働基準法9条に規定する労働者(事業に使用される者で、賃金を支払われる者)のことをいいます。正社員、アルバイト、パートタイマーなど、公務員も含まれます。

労働者であった者(退職者)とは、通報の日前1年以内に勤務先(派遣先)で働いていた者をいいます。

請負契約等の取引先事業者の事業に従事する労働者、派遣労働者、役員も通報の主体に含まれます。

「役員」とは、取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事及び、清算人のほか、法令の規定に基づき法人の経営に従事している者(会計監査人を除く)をいいます。

通報の目的の「不法の目的ではなく」とはどのような意味ですか

通報の目的として、「不正の利益を得る目的、他人に不正の損害を加える目的、その他の不正の目的」でないことが規定されています。

「不正の利益を得る目的」(公序良俗に反する形で自己又は他人の利益を図る目的)、「他人に不正の損害を加える目的」(社会通念上通報のために必要かつ相当な限度内にとどまらない財産上の損害、信用の失墜その他の有形無形の損害を加える目的)「その他の不正の目的」とは、公序良俗に反する目的でないことを意味します。

「不正の目的」ではないと認められなければ足り、名誉棄損罪の要件のように、「専ら公益を図る目的」の通報と認められることまで要しません。交渉を有利に進めようとする目的や事業者に対する個人的な反感などの目的が併存しているだけでは、「不正の目的」であるとはいえません。

「役務提供先」とはどのような事業者のことですか

「役務提供先」とは、労働者や役員が役務を提供している(退職者の場合は1年以内に役務を提供していた)事業者のことです。

通報の主体や勤務形態の応じて「役務提供先」は次のとおりです。

① 労働者が勤務先で働いている場合 「勤務先(雇用元)の事業者」
② 派遣労働者が派遣先で働いている場合 「派遣先の事業者」
③ 役員を務めている勤務先で働いている場合 「役員を務めている勤務先の事業者(勤務先)」
④ 請負契約等に基づいて取引先で働いている場合 「取引先の事業者」

「事業者」とは、「法人その他の団体」と「事業を行う個人」のことです。
「法人その他の団体」とは、株式会社などの営利法人だけではなく、公益法人、協同組合、特定非営利活動法人、国の行政機関、地方公共団体など広く含まれます。
また「事業を行う個人」とは、個人事業者のことです。

なお、「公益通報の内容」は、役務提供先の事業者とその事業に従事する役員、従業者、代理人その他の者によって、犯罪行為事実等の通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていることです。

法第2条第1項各号は通報主体の「通報者」と役務提供先の「事業者」との関係についてどのように規定していますか

① 「通報者」 労働者又は労働者であった者
「事業者」 労働者又は労働者であった者を自ら使用し又は通報の日前1年以内に自ら使用していた事業者(1号)

② 「通報者」 派遣労働者又は派遣労働者であった者
「事業者」 派遣労働者又は派遣労働者であった者に係る労働者派遣の役務の提供を受け又は通報の日前1年以内に受けていた事業者(2号)

③ 「通報者」 ①、②の事業者が「他の事業者」との請負契約その他の契約に基づいて事業を行い又は行っていた場合において、事業に従事し又は通報の日前1年以内に従事していた労働者若しくは労働者であった者又は派遣労働者若しくは派遣労働者であった者
 「事業者」 他の事業者(取引先事業者)(3号)
なお、請負契約その他契約として、「継続的な物品納入契約」「継続的な役務提供」「継続的な顧問契約」などがあります。

④ 「通報者」 役員 
「事業者」 次に掲げる事業者(4号)

イ 役員に職務を行わせる事業者
ロ 事業者が「他の事業者」との請負契約その他の契約に基づいて事業を行う場合において、当該役員が当該事業に従事するときにおける「他の事業者」(取引先事業者)

「通報対象事実」とはどのような事実ですか

ア 「通報対象事実」とは、①法の定める対象法律(対象法律に基づく命令を含む。)に規定する罪の犯罪行為の事実及び又は対象法律等に規定する過料の理由とされている事実(2条3項1号)、②対象法律の規定に基づく処分に違反することが、最終的に刑罰又は過料の処分の理由とされている事実(同項2号)をいいます。

本項2号は、規定違反が直接刑罰又は過料が科せられる違反行為でなくても、その違反に対し、主務大臣等の行政処分が用意されており、かつ、その行政処分に違反することが最終的に刑罰、過料につながる行為について規定しています。例えば、法の基準違反→指示違反→命令違反→刑罰等となる行為です。この場合には、法の基準違反、指示違反に対して、直接刑罰等が科されるものではないですが、違反を続けることで命令が出され命令違反に対し刑罰等が科されることになります。

イ 「法の定める対象法律」とは、「この法律及び個人の生命又は身体の保護、消費者の利益の擁護、環境の保全、公正な競争の確保その他の国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法律として別表に掲げるもの(これらの法律に基づく命令を含みます。)をいいます。

これらの法律に規定する罪の犯罪行為の事実又はこの法律及び同表に掲げる法律に規定する過料の理由とされている事実が「通報対象事実」に該当します。

ウ 別表(第2条関係)1号から7号に掲げる法律は次のものです。

「個人の生命又は身体の保護」 ①刑法、②食品衛生法

「消費者の利益の擁護」 ③金融商品取引法、④日本農林規格法

 「環境の保全」 ⑤大気汚染防止法、⑥廃棄物処理等法

「その他の利益の保護」 ⑦個人情報保護法

エ 別表8号は、「前各号に掲げるもののほか、個人の生命又は身体の保護、消費者の利益の擁護、環境の保全、公正な競争の確保その他の国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法律として政令で定めるもの」と規定しています。

政令では、現在、493本の法律が対象法律として定められています。

政令の選定のポイントは、刑罰又は過料の規定のある法律であることを前提として、①法律の目的が、事業者への規制に関する規定で、「国民の生命、身体、財産その他の利益の保護」を保護することを直接的な目的としていること、②違反行為により、「国民の生命、身体、財産その他の利益」への被害が生じることが想定されていることです。

「個人の生命又は身体の保護」道路運送車両法、建築基準法等

「消費者の利益の擁護」食品表示法、特定取引法、不当景品防止法等

「環境の保全」水質汚濁防止法、土壌汚染対策法、悪臭防止法等

「公正な競争の確保」独占禁止法、取引適正化法(旧下請法)等

「その他の利益の保護」労働基準法、著作権法、不正アクセス禁止法等

公益通報の「通報先」はどこになりますか

「通報先」として、①役務提供先等(事業者内部)、②権限を有する行政機関等、③その他の「事業者外部」が規定されています(2条1項)。

①役務提供先等(事業者内部)とは、「役務提供先の事業者」又は「役務提供先の事業者があらかじめ定めた者」をいいます。

②権限を有する行政機関等とは、「通報対象事実について処分又は勧告等をする権限を有する行政機関」又は「行政機関があらかじめ定めた者」をいいます。なお、行政機関には、国の行政機関のほかに、都道府県等の地方公共団体の機関(議会を除く)も含まれます(4項)。

通報対象事実について「処分」とは、命令、取消しその他公権力の行使に当たる行為をいいます。「勧告等」とは、勧告その他処分に当たらない行為をいいます。

③その他の「事業者外部」とは、「その者に対し当該通報対象事実を通報することがその発生若しくはこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者」をいいます。

例えば、報道機関、消費者団体、事業者団体、オンブズマン団体、弁護士や公認会計士が運営する公益通報者支援団体、国会議員等。

なお、ライバル企業など「役務提供先の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある者」は除かれます。

公益通報者が公益通報者保護法に基づく保護を受ける要件(保護要件)はどのように定められていますか

公益通報者の保護要件は、公益通報先が、事業者内部(役務提供先等)か、権限を有する行政機関等か、その他の事業者外部か、に応じて保護要件が定められています(3条)。

通報先に応じて保護要件が定められている理由は、犯罪行為やその他法令違反行為の通報による公益の実現と、事業者の正当な利益の保護とのバランスを図る観点からです。

(1) 役務提供先等(事業者内部)に通報する場合(1号)

保護要件は、通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると「思料する場合」です。

役務提供先等の事業者内部への通報については、「信ずるに足りる相当の理由」(真実相当性等)は必要なく、単に「思料する場合」でよいので、保護要件が緩和されています。

  (2) 権限を有する行政機関等に通報する場合(2号)

保護要件は、①通報対象事実が生じ、まさに生じようとしていると「信ずるに足りる相当の理由」がある場合、又は②通報対象事実が生じ、まさに生じようとしていると思料し、かつ、次のイからニの事項を記載した書面(電磁的方式の記録を含む。)を提出する場合です。

イ 氏名、住所等、
ロ 通報対象事実の内容
ハ 通報対象事実が生じ、まさに生じようとしていると思料する理由
ニ 通報対象事実について法令に基づく措置その他の適当な措置が取られるべきと思料する理由

「信ずるに足りる相当の理由」とは、通報事実が真実であるこを裏付ける証拠や関係者の供述等の合理的な根拠があることをいいます。

通報者が「役員」の場合には、保護要件として、個人の生命、身体、財産保護の急迫な危険がある場合を除き、自ら調査、是正に必要な措置(是正措置)をとることに努めることも必要です(6条2項イ、ロ)。また、保護要件②については対象外となります。

  (3) その他の「事業者外部」に通報する場合(3号)

保護要件は、通報対象事実が生じ、まさに生じようとしていると「信ずるに足りる相当の理由」があり、かつ、次のイからへのいずれかに該当する場合

イ 役務提供先等(事業者内部)又は行政機関等に公益通報をすれば、解雇その他不利益な取扱いを受けると信ずるに足りる相当の理由がある場合

ロ 役務提供先等(事業者内部)に公益通報をすれば、通報対象事実に係る証拠が隠滅され、偽造され、又は変造されるおそれがあると信ずるに足りる相当の理由がある場合

ハ 役務提供先等(事業者内部)に公益通報をすれば、役務提供先が、通報者について知り得た事項を、通報者を特定させるものであることを知りながら、正当な理由がなくて漏らすと信ずるに足りる相当の理由がある場合

ニ 役務提供先から役務提供先等(事業者内部)又は行政機関に公益通報をしないことを正当な理由がなくて要求された場合

ホ 書面により役務提供先等(事業者内部)に公益通報をした日から20日を経過しても、通報対象事実について、当該役務提供先等から調査を行う旨の通知がない場合又は当該役務提供先等が正当な理由がなくて調査を行わない場合

へ 個人の生命若しくは身体に対する危害又は個人(事業を行う場合におけるものを除く。)の財産に対する損害(回復することができない損害又は著しく多数の個人における多額の損害であって、通報対象事実を直接の原因とするものに限る。)が発生し、又は発生する急迫した危険があると信ずるに足りる相当の理由がある場合

なお、通報者が役員の場合には、保護要件として、イ、ロ、ニについては、自ら調査、是正に必要な措置(是正措置)をとることに努めることも必要です(6条3項イ、ロ)。また、ハ、ホについては対象外となります。

「通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしている」とはどのような意味ですか

 「生じ」とは、通報対象事実が現に生じている場合及び過去に生じた場合をいいます。通報対象事実の犯罪行為等が継続していることは要しません。
「まさに生じようとしている」とは、通報対象事実の発生が切迫しており、発生する蓋然性が高い場合をいいます。
必ずしも発生する直前のみをいうわけではありません。

「通報」とはどのような行為ですか、「通報」は匿名でもいいのですか

「通報」とは、一定の事実を他人に知らせることをいいます。本法では、通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしている旨を所定の公益通報先に知らせることをいいます。

通報対象事実について、公益通報に該当するか否かまた調査や是正等が実施できる程度に具体的に知らせるものであれば、それがどの法律のどの条項に違反するかについて通報者が認識している必要はありません。また、通報者が適用法令を誤って認識していたとしても、公益通報に当たります。公益通報に当たるか否かは、通報の時点を基準に判断されます。

通報は顕名の通報に限定されず、「匿名」の通報も保護の対象になります。ただ、匿名の場合には、通報者と連絡が取れないため、通報対象事実の確認が困難となり必要な調査が実施できないこと、また通報先から調査結果や是正結果の通知を受けられないこともあります。

パワー・ハラスメントやセクシャル・ハラスメントは、公益通報対象事実に該当しますか

パワー・ハラスメントやセクシャル・ハラスメントは、原則として公益通報対象事実には該当しません。

パワー・ハラスメントは「労働施策総合推進法」、セクシャル・ハラスメントは「男女雇用機会均等法」においてそれぞれ規定されていますが、いずれも犯罪行為や過料対象行為または最終的に刑罰・過料につながる法令違反行為と定められていないことから、公益通報対象事実には該当しません。ただし、これらのハラスメント行為が暴行・脅迫や不同意わいせつ等の刑法上の罪の規定する犯罪行為の事実に当たる場合には、公益通報対象事実に該当することになります。

公益通報窓口の担当者は、パワー・ハラスメントやセクシャル・ハラスメントについても、必要な事実確認を行うか、他にパワー・ハラスメントやセクシャル・ハラスメントの担当窓口があれば、通報をその窓口につなぐことが必要になります。

公益通報者はどのような保護が受けられますか

公益通報をしたことを理由とする公益通報者の解雇は無効であり、不利益な取扱いは禁止されています。

(1) 勤務先事業者からの保護

① 解雇の無効
労働者である公益通報者が公益通報をしたことを理由として、勤務先事業者(労働契約を結んでいる事業者)が行った解雇は無効です(3条)。

② 不利益な取扱いは禁止等
勤務先事業者は、労働者等である公益通報者が公益通報をしたことを理由として、公益通報者に対して、降格、減給、退職金の不支給その他不利益な取扱いをすることは禁止されています(6条1項)。

③ 損害賠償の制限
勤務先事業者は、公益通報によって損害を受けたことを理由として、公益通報者に対して、賠償を請求することができません(7条)。

(2) 派遣先事業者からの保護

① 労働者派遣契約の解除の無効
派遣先事業者(労働者派遣の役務の提供を受ける事業者)が派遣労働者が公益通報をしたことを理由として行った労働者派遣契約の解除は無効です(4条)。

② 不利益な取扱いは禁止等
派遣先事業者は、派遣労働者が公益通報をしたことを理由として、派遣元事業者に公益通報をした派遣労働者の交代を求めることその他不利益な取扱いをすることも禁止されています(5条2項)。

③ 損害賠償の制限 
派遣先事業者は、公益通報によって損害を受けたことを理由として、公益通報者に対して、賠償を請求することができません(7条)。

(3) 役員に職務を行わせる事業者からの保護

① 不利益な取扱い禁止等
役員に職務を行わせる事業者は、役員が公益通報をしたことを理由として、報酬の減額その他不利益な取扱い(解任を除く。)をすることはできません(5条3項)。

なお、役員について解任が除かれているのは、役員は法人との信頼関係に基づく委任契約の関係にあり、委任契約の解除、役員の解任はいつでもすることができると規定されている(民法651条1項)からです。他方で、役員は、公益通報をしたことを理由として、事業者から解任された場合には、解任によって生じた損害の賠償を請求することができます(6条1項)。

② 損害賠償の制限
勤務先事業者又は取引先事業者は、公益通報によって損害を受けたことを理由として、公益通報をした公益通報者に対して、賠償を請求することができません(7条)。

(4) 一般職の国家公務員等に対する取扱い

公益通報をしたことを理由とする一般職の国家公務員等に対する免職その他不利益な取扱いの禁止については、本法第3条から第5条までの規定にかかわらず、国家公務員法等の各法律の定めるところによります。

この場合において、事業者は公益通報をしたことを理由として一般職の国家公務員等に対して免職その他不利益な取扱いがされることのないよう、これらの法律の規定を適用しなければなりません(9条)。

公益通報者保護法にはどうして第8条の解釈規定が設けられているのですか

公益通報者保護法8条は「解釈規定」として、「第3条から前条までの規定は、通報対象事実に係る通報をしたことを理由として第2条第1項各号に掲げる者に対して解雇その他不利益な取扱いをすることを禁止する他の法令の規定の適用を妨げるものではない。」等と規定しています。

このような解釈規定が設けられたのは、公益通報者保護法は、あくまで公益通報者の保護を目的とするものであること、本法の公益通報の保護要件に該当しない場合であっても、出向命令、懲戒、解雇に合理性や社会的相当性のないことも考えられ、そのような事例について、労働契約法第14条(出向)、第15条(懲戒)、第16条(解雇)の規定の適用を排除するものでないことを明らかにしたものです。

公益通報の際に注意すべきことはどのようなことですか

公益通報者保護法10条は、「他人の正当な利益等の尊重」として、「公益通報をする者は、他人の正当な利益又は公共の利益を害することのないよう努めなければならない。」と規定しています。

公益通報の際に、通報内容に第三者の個人情報や関係のない事業者の営業秘密、また国や社会の安全に関する情報などが含まれている場合には、他人の正当な利益が害されるおそれがあります。また、通報内容が真実でなかった場合には、報道等で情報が広まると回復できない損害を生じることもあり得ます。そこで、他人の正当な利益又は公共の利益を害することのないよう注意する必要があります。

公益通報者保護のため事業者はどのような措置をとる必要がありますか

事業者は、次の措置をとる必要があります(11条)。

① 公益通報対応業務に従事する者を定めなければなりません(1項)。

公益通報対応業務とは、公益通報の受付、公益通報に係る通報対象事実の調査、その是正に必要な措置をとる業務をいいます。

② 公益通報に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置をとらなければなりません(2項)。

これは公益通報者の保護を図るとともに、公益通報の内容の活用により国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法令の規定の遵守を図るためのものです。

なお、常時使用する労働者の数が300人以下の事業者については、これらの措置について「努めなければならない」と努力義務とされています(3項)。

③ 内閣総理大臣により、事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(「指針」)が定められています(4項)。なお、法定「指針」については解説が作成されています。

④ 内閣総理大臣は、これらの規定の施行に関し必要があると認めるときは、事業者に対して、報告の徴収並びに助言、指導及び勧告をすることができます(15条)。また、これらの規定に違反している事業者に対し、勧告をしても勧告に従わなかったときは、その旨を公表することができます(16条)。

なお、報告の徴収について、報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、20万円以下の過料に処せられます(22条)。

公益通報対応業務の従事者等にはどのような義務があるのでしょうか

公益通報対応業務の従事者又は従事者であった者は、正当な理由がなく、その公益通報対応業務に関して知り得た事項であって公益通報者を特定させるものを漏らしてはならないとの義務があります(12条)。

本条の義務に違反して公益通報者を特定させる事項を漏らした者は、30万円以下の罰金に処せられます(21条)。

行政機関に公益通報があった場合にはどのような措置がとられますか

① 行政機関は、公益通報があった場合には、通報対象事実について必要な調査を行い、公益通報に係る通報対象事実があると認めるときは、法令に基づく措置その他適当な措置をとらなければなりません(13条1項)。

② 上記の必要な調査等の措置の適切な実施を図るため、公益通報に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置をとらなければなりません(13条2項)。

③ 公益通報が犯罪行為の事実を内容とする場合、犯罪の捜査及び公訴については、刑事訴訟法の定めるところにより措置されます(13条3項)。

④ 公益通報が誤ってその公益通報に係る通報対象事実について権限を有しない行政機関に対してされたときは、行政機関は、公益通報者に対し、その公益通報に係る通報対象事実について権限を有する行政機関を教示しなければなりません(14条)。

令和7年改正のポイントはどのような点ですか

公益通報者保護法は令和7年6月4日に改正され、令和8年12月1日から施行されます。改正のポイントは4点にあります。

① 事業者が公益通報に適切に対応するための体制整備の徹底と実効性の向上を図るための改正

ア 内閣総理大臣は、第11条第1項(公益通報対応業務従事者の定め)の規定に違反しているときは、事業者に対して、是正に必要な措置を勧告することができます(15条の2、1項)。正当な理由がなく、勧告の措置をとらなかったときは、勧告の措置を命令することができ(2項)、命令した旨を公表することができます(3項)。

常時使用する労働者の数が300人以下の事業者については、第11条第1項及び第2項(必要な体制整備)の規定の施行に関し必要があるときは、事業者に対して、勧告をすることができ(4項)、正当な理由がなく、勧告に係る措置をとらなかったときは、その旨を公表することができます(5項)。

イ 内閣総理大臣は、第11条第1項の規定の施行に必要な限度において、事業者に対し、報告をさせ、又はその職員に、事業者の事務所その他の事業場に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができます(16条1項)。

常時使用する労働者の数が300人以下の事業者については、第11条第1項及び第2項の規定の施行に必要な限度において、事業者に対し、報告を求めることができます(2項)。

第1項の規定により職員が立ち入るときは、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければなりません(3項)。

第1項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはなりません。

ウ 第15条の2第2項の規定による命令に違反した者は、30万円以下の罰金に処せられます(21条2項1号)。

命令違反については行為者が罰せられるほか、法人に対して3000万円以下の罰金が科されます(23条2号、21条2項1号)、また、個人事業者に対して30万円以下の罰金が科されます(23条、21条2項1号)。

エ 事業者がとるべき措置等について、「労働者等に対するその周知その他の必要な措置」をとる義務が追加されました(11条2項)。

② 公益通報者の範囲拡大のための改正

ア 公益通報者の範囲に、事業者と業務委託関係で働くフリーランス従事者又はフリーランス従事者であった者(業務委託関係が終了して1年以内の者)が追加されました(2条1項3号)。この場合の役務提供先は業務受託事業者になります。

なお、フリーランス従事者とは、正確には、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律第2条第2項に規定する「特定受託業務従事者」をいいます。

イ 公益通報をしたことを理由とするフリーランス従事者に対する業務委託に係る契約の解除、取引の数量の削減、取引の停止、報酬の減額その他不利益な取扱いを禁止しています(5条)。

③ 公益通報を阻害する要因への対処のための改正

ア 通報妨害の禁止等(11条の2)

事業者は、正当な理由がなく、公益通報をしない旨の合意をすることを求めること、公益通報をした場合に不利益な取扱いをすることを告げることその他の行為によって、公益通報を妨げてはなりません(1項)。

この規定に違反してされた合意その他の法律行為は、無効です(2項)。

イ 通報者探索の禁止(11条の3)

事業者は、正当な理由がなく、公益通報者である旨を明らかにすることを要求することその他の公益通報者を特定することを目的とする行為をしてはなりません(1項)。

④ 公益通報を理由とする不利益な取扱いの抑止・救済の強化のための改正

ア 公益通報を理由とする解雇その他の不利益取扱い禁止(3条1項)の規定に違反して事業者が行った解雇等特定不利益取扱いは、無効です(2項)。

イ 公益通報者に対する解雇等特定不利益取扱いが公益通報をした日(又は事業者が公益通報がされたことを知って解雇等特定不利益取扱いをした場合には、事業者が公益通報を知った日)から1年以内にされたときは、解雇等特定不利益取扱いは、公益通報をしたことを理由としてされたものと推定されます(3項)。これにより訴訟上の立証責任が転換されました。

ウ 解雇等特定不利益取扱い禁止違反に対する罰則

第3条第1項の規定に違反して解雇等特定不利益取扱い行為をした者は、6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処されます(21条1項)。

解雇等特定不利益取扱いをした違反行為者が罰せられるほか、法人に対して3000万円以下の罰金が科されます(23条1号、21条1項)。また、個人事業者に対して30万円以下の罰金が科されます(23条、21条1項)。

エ 一般職の国家公務員等に対する取扱い(9条)

一般職の国家公務員等及び一般職の地方公務員については、第3条第2項(解雇等特定不利益取扱いの無効)及び第3項(解雇等特定不利益取扱いを公益通報理由としてされたものと推定)の規定は適用されません。

第3条第1項(解雇その他の不利益取扱いの禁止)の規定の適用については、公益通報理由とする「懲戒免職、分限免職」その他の不利益取扱いが禁止されます。

第21条第1項(罰則)の規定の適用については、公益通報理由とする「懲戒免職、分限免職」禁止に違反行為をした者は、6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処されます。

個人情報保護法

個人情報保護法の目的は何ですか

個人情報保護法は、デジタル社会の進展に伴い個人情報の利用が著しく拡大していることに鑑み、個人情報の取扱いに関し、個人情報を取り扱う事業者や行政機関等の遵守すべき義務等を定めるとともに、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的としています。

個人情報保護法の一元化とはどのようなことですか

令和3年の改正前は、民間事業者を対象とした個人情報保護法と、国の行政機関を対象とした行政機関個人情報保護法、国の独立行政法人を対象とした独立行政法人等個人情報保護法の3本の法律がありました。令和3年の改正で個人情報保護法1本の法律に統合されました。また、都道府県、市町村等の地方公共団体や地方独立行政法人等については、各自治体による独自の個人情報保護に関する条例が制定されていました。令和3年の改正で地方公共団体等における個人情報の取扱いについて全国的な共通ルールが設定されました。このほかに、個人情報保護委員会が、全体における個人情報の取扱いを一元的に監視監督する体制が構築されました。

個人情報保護法はどうして一元化されたのですか

個人情報保護法の一元化により、国の行政機関、独立行政法人等や地方公共団体等における個人情報の取扱の監視監督の中立性・客観性が向上すること、個人情報保護法制に対する国際的な信頼が高まり、国境を越えたデータ流通が円滑化すること、官民や地域の枠を超えたデータ利活用が活発化すること、といった効果が期待されるからです。

 特に、地方自治体の2000近い規律内容の異なる個々の条例による「2000個問題」が解消し、医療分野・学術分野の連携、共同研究がスムーズに行われ、感染症の流行、大規模災害の対応等について迅速な対応が可能になる、といった効果が期待されるからです。

個人情報保護法の一元化により個人情報の取扱いに関する民間事業者の規律と国の行政機関等の規律が統一されたのですか

令和3年の改正で、個人情報保護法は一元化されましたが、官民の個人情報保護に関する規律全般は統一されていません。その理由は、官民では、「利用者がサービスの供給者を選択できるかどうか」という点で基本的な性格の違いがあるからです。民間部門では、どの事業者のどのサービスを利用するかについて選択することができるので、個人情報の取得や利用、提供に関し、本人の同意や期待を重視した規律が採用されています。これに対し、公的部門では、利用者の選択ではなく、行政機関等の法令上の業務の遂行に必要かどうかを重視した規律が採用されているからです。

個人情報保護法はどのような構成になっていますか

個人情報保護法の第1章~第3章は、基本的事項を規定しています。

第4章は、民間部門(独立行政法人のうち大学等の学術研究機関、病院等の医療機関を含みます。)に関する規律を規定しています。

第5章は、国の行政機関、独立行政法人等と地方公共団体、地方独立行政法人等に関する規律を規定しています。

第6章は個人情報保護委員会、第7章は雑則、第8章は罰則に関して規定しています。

なお、今後の個人情報保護法に関するQ&Aについては、第4章の民間の個人情報取扱事業者に関する規定に基づくものになります。

個人情報とはどのような情報ですか

個人情報とは、「生存する個人に関する情報」であって、次のいずれかに該当するものをいいます(2条1項)。

① その情報に含まれる「氏名、生年月日その他の記述等(電磁的記録を含みます)により特定の個人を識別することができる」一切の事項。他の情報と「容易に照合」することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含みます(1号)。

② 「個人識別符号」が含まれるもの(2号)。

個人識別符号とはどのような符号ですか

「個人識別符号」とは、次のいずれかに該当する文字、番号、記号その他の符号のうち、政令で定めるものをいいます(2条2項)。

① 身体の一部の特徴を電子計算機の用に供するために変換した符号で、特定の個人を識別することができるもの

② 役務の利用、個人に販売される商品の購入等に関し割り当て等された符号で、個人ごとに異なるものとなるように割り当て等されることにより、特定の利用者等を識別することができるもの

政令で定められているのは次の符号です。

①の符号:DNA(遺伝子)の配列、顔の容貌、虹彩の模様、音声の振動形状等、歩行態様、手静脈の形状、指紋掌紋

②の符号:旅券の番号、基礎年金番号、運転免許証の番号、住民票コード個人番号(マイナンバー)、健康保険等の被保険者証の記号、番号及び保険者番号等

要配慮個人情報とはどのような情報ですか

「要配慮個人情報」とは、次の記述等が含まれる個人情報をいいます。

① 人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪被害の事実

② その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報(2条3項)

政令(2条)で定める記述等の内容

ⅰ身体障害、知的障害、精神障害その他の心身の機能の障害があること、ⅱ医師等の健康診断等の結果、ⅲ医師等による心身の状態の改善のための指導、診療、調剤が行われたこと、ⅳ逮捕、捜索、公訴提起その他の刑事事件手続に関する手続が行われたこと、ⅴ調査、審判、保護処分その他の少年事件手続に関する手続が行われたこと

 要配慮個人情報については、①原則としてあらかじめ本人の同意を得ないで取得してはなりません。②オプトアウト手続により第三者提供することができません。

個人情報取扱事業者とはどのような事業者のことですか

「個人情報取扱事業者」とは、個人情報データベース等を事業の用に供している者をいいます(16条2項)。

民間の事業者と大学等の学術研究部門及び医療部門の独立行政法人等が含まれます。国の行政機関、地方公共団体等は除かれます。

なお、個人情報の取扱数が5000人以下の小規模事業者は除外されていましたが、平成27年改正で含まれることになりました。

個人情報データベース等とはどのようなものですか

「個人情報データベース等」とは、個人情報を含む情報の集合物であって、次に掲げるものをいいます(16条1項)

① 特定の個人情報を電子計算機(コンピュータ)を用いて検索することができるように体系的に構成したもの。

② 特定の個人情報を「容易に検索」することができるように体系的に構成したものとして政令で定めるもの。

なお、利用方法からみて個人の権利利益を害するおそれが少ないものとして政令(4条)で定めるもの(不特定かつ多数の者に販売することを目的にとして発行されたもの等)は除外されます。例えば、市販のカーナビ、電話帳、住宅地図等

個人データとはどのようなものですか

「個人データ」とは、個人情報データベース等を構成する個人情報をいいます(16条3項)。

保有個人データとはどのようなものですか

「保有個人データ」とは、個人情報取扱事業者が、本人から請求される開示、訂正、追加、削除、利用の停止、消去及び第三者への提供の停止を行うことのできる権限を有する個人データをいいます(16条4項)。

なお、その存否が明らかになることにより公益その他の利益が害されるものとして政令で定めるものは該当しません。

政令(5条)で定められているのは、ⅰ生命、身体又は財産に危害が及ぶおそれがあるもの、ⅱ違法・不当な行為を助長、誘発するおそれがあるもの、ⅲ国の安全や国際的な信頼関係を損う等のおそれのあるもの、ⅳ犯罪の予防や捜査等の公共の安全と秩序の維持に支障が及ぶおそれがあるものです。

個人情報、個人データ取扱いに関する基本ルールはどのようなルールですか

基本ルールには4つのルールがあります。①個人情報の取得・利用に関するルール、②個人データの保管・管理に関するルール、③個人データの第三者提供に関するルール、④保有個人データの開示請求等に関するルールです。

個人情報の取得・利用に関するルール(17条~21条)はどのように規定されていますか

① 利用目的の特定・変更等(17条)

個人情報を取り扱うに当たっては、その利用目的をできる限り特定しなければなりません(1項)。

利用目的を変更する場合には、変更前の利用目的と関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて行ってはなりません(2項)。

なお、利用目的を変更した場合は、変更された利用目的について、本人に通知し又は公表しなければなりません(21条3項)。

② 利用目的による取扱いの制限(18条)

特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱うには、あらかじめ本人の同意を得る必要があります(1項)。

合併その他の事由により他の事業者から事業を承継することに伴って個人情報を取得した場合は、あらかじめ本人の同意を得ないで、承継前における利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはなりません(2項)。

これらの規定は、次に掲げる場合については適用されません(3項)。

ⅰ 法令に基づく場合(1号)

ⅱ 人の生命、身体、財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき(2号)

ⅲ 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき(3号)

ⅳ 国の機関、地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき(4号)

ⅴ 学術研究機関等である場合、個人情報を学術研究目的で取り扱う必要があるとき(5号)

ⅵ 学術研究機関等に個人データを提供する場合、学術研究機関等が個人データを学術研究目的で取り扱う必要があるとき(6号)

③ 不適正な利用の禁止(19条)

違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがある方法により個人情報を利用してはなりません。

④ 適正な取得(20条)

個人情報は、適正な手段により取得しなければなりません。偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはなりません(1項)。

要配慮個人情報については、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで取得してはなりません(2項)。

次に掲げる場合として除外される場合

18条3項1号から4号に掲げる場合

ⅴ 学術研究機関等である場合であって、要配慮個人情報を学術研究目的で取り扱う必要があるとき(5号)

ⅵ 学術研究機関等から要配慮個人情報を取得する場合であって、要配慮個人情報を学術研究目的で取得する必要があるとき(6号)

ⅶ 要配慮個人情報が、本人、国の機関、地方公共団体、学術研究機関等、第57条第1項各号(適用除外規定)に掲げる者(報道機関、著述業、宗教団体、政治団体)その他個人情報保護委員会規則で定める者により公開されている場合(7号)

ⅷ その他上記に掲げる場合に準ずるものとして政令で定める場合(8号)

7号の個人情報保護委員会規則(6条)で定める者は次のとおりです。

ⅰ 外国政府、外国の政府機関、外国の地方公共団体又は国際機関

ⅱ 外国の報道機関、著述業、学術研究機関、宗教団体、政治団体

8号の政令(9条)で定める場合は次のとおりです。

ⅰ 本人を目視又は(防犯カメラ等で)撮影することにより、その外形上明らかな要配慮個人情報を取得する場合(1号)

ⅱ 法27条5項各号に定める委託、事業承継、共同利用の場合(第三者提供に関して第三者に該当しないとされる場合)において、個人データである要配慮個人情報の提供を受けるとき(2号)

⑤ 取得に際しての利用目的の通知等(21条)

ア 個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を本人に通知し又は公表しなければなりません(1項)。

契約を締結することに伴って契約書その他の書面に記載された本人の個人情報を取得する場合は、あらかじめ、本人に対し、その利用目的を明示しなければなりません。利用目的を変更した場合は、変更された利用目的について、本人に通知し又は公表しなければなりません(2項)。

利用目的を変更した場合は、変更された利用目的について、本人に通知し又は公表しなければなりません(3項)。

イ これらの規定は、次に掲げる場合については適用されません(4項)。

ⅰ 利用目的を本人に通知し、又は公表することにより本人又は第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合

ⅱ 利用目的を本人に通知し、又は公表することにより個人情報取扱事業者の権利又は正当な利益を害するおそれがある場合

ⅲ 国の機関、地方公共団体が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、利用目的を本人に通知し、又は公表することにより事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき

ⅳ 取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められる場合

個人データの保管・管理に関するルール(22条~26条)はどのように規定されていますか

① データ内容の正確性の確保(22条)

利用目的の達成に必要な範囲内において、個人データを正確かつ最新の内容に保つとともに、利用する必要がなくなったときは、個人データを遅滞なく消去するよう努めなければなりません。

  安全管理措置(23条)

取り扱う個人データの漏えい、滅失又は毀損の防止、その他の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければなりません。

③ 従業者の監督(24条)

個人データの安全管理が図られるよう、従業者に対する必要かつ適切な監督を行わなければなりません。

④ 委託先の監督(25条)

個人データの取扱いを委託する場合は、個人データの安全管理が図られるよう、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければなりません。

⑤ 漏えい等の報告等(26条)

ア 個人データの漏えい、滅失、毀損その他の個人データの安全の確保に係る事態であって、個人の権利利益を害するおそれが大きいものとして個人情報保護委員会規則で定めるものが生じたときは、漏えい等の事態が生じたことを個人情報保護委員会に「報告」しなければなりません(1項)。

その場合には、本人に対し、漏えい等の事態が生じた旨を「通知」しなければなりません。本人への通知が困難な場合には、本人の権利利益を保護するため必要なこれに代わるべき措置をとる必要があります(2項)。

イ 「個人の権利利益を害するおそれが大きいもの」として、個人情報保護委員会規則(7条)で定めるものは、次のいずれかに該当するものです。

ⅰ 要配慮個人情報が含まれる個人データ(高度な暗号化その他の個人の権利利益を保護するために必要な措置を講じたものを除く)の漏えい等が発生し又は発生したおそれがある事態

ⅱ 不正に利用されることにより財産的被害が生じるおそれがある個人データの漏えい等が発生し又は発生したおそれがある事態

ⅲ 不正の目的をもって行われたおそれがある個人データの漏えい等が発生し又は発生したおそれがある事態

ⅳ 個人データに係る本人の数が千人を超える漏えい等が発生し又は発生したおそれがある事態

個人データの第三者提供に関するルール(27条~31条)はどのように規定されていますか

① 第三者提供の制限(27条)

ア 次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはなりません(1項)。

第三者提供の制限は、原則としてオプトイン方式(事前の本人同意原則)を採用しています。

次に掲げる場合として除外されるのは以下の場合です。

ⅰ 法令に基づく場合(1号)

ⅱ 人の生命、身体、財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき(2号)

ⅲ 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき(3号)

ⅳ 国の機関、地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき(4号)

ⅴ 学術研究機関等である場合、個人データの提供が学術研究の成果の公表又は教授のためやむを得ないとき(5号)

ⅵ 学術研究機関等である場合、個人データを学術研究目的で提供する必要があるとき(6号)

ⅶ 第三者が学術研究機関等である場合、第三者が個人データを学術研究目的で取り扱う必要があるとき(7号)

イ これに対して、第三者に提供される個人データについて、本人の求めに応じて本人が識別される個人データの第三者への提供を停止することとしている場合に、事業者の氏名又は名称及び住所等の事項について、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、あらかじめ、本人に通知し又は本人が容易に知り得る状態に置くとともに、個人情報保護委員会に届け出たときは、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供することができます(2項)。

これはオプトアウト方式(事後の拒絶の選択、事後の拒否権)の仕組みです。オプトアウト方式は、社会において広く利用されており問題も生じています。その対応として規制が強化されています。

第三者に提供される個人データが、ⅰ要配慮個人情報、ⅱ適正取得の規定に違反して取得されたもの、ⅲ他の個人情報取扱事業者からオプトアウトにより提供されたものについては、オプトアウトの方法で第三者に提供することは出来ません(2項ただし書)。

ウ 他の事業者等への情報提供であるが、「第三者」に該当しないものとする場合(5項)

「委託」:利用目的の達成に必要な範囲内において個人データの取扱いの全部又は一部を「委託」することに伴って個人データが提供される場合、「事業継承」:合併等による「事業の継承」に伴って個人データが提供される場合、「共同利用」:特定の者との間で「共同して利用」される個人データが提供される場合

② 外国にある第三者への提供の制限(28条)

外国にある第三者に個人データを提供する場合には、あらかじめ外国にある第三者への提供を認める旨の本人の同意を得なければなりません。

本人の同意を得ようとする場合には、あらかじめ、外国における個人情報保護に関する制度、第三者が講ずる個人情報の保護のための措置、その他本人に参考となるべき情報を提供しなければなりません。

EU「個人データ保護指令」の規定に基づく「十分性認定審査基準」の一つとして「域外移転制限規定」の存在があります。この規定との関係で、日本に移転された個人データの第三国への再移転について制限する必要があり、平成27年改正により本条の「越境移転制限規定」が設けられました。平成30年5月、EUでは「一般データ保護規則(GDPR)」が施行され大幅な規制強化が図られました。違反者に対しては最高で世界売上の4%か200万ユーロ(約26億円)のうちのいずれか高い方の制裁金が科せられます。

③ 第三者提供に係る記録の作成等(29条)

個人データを第三者に提供したときは、個人データを提供した年月日、第三者の氏名又は名称その他の個人情報保護委員会規則で定める事項に関する記録を作成しなければなりません。

④ 第三者提供を受ける際の確認、記録等(30条)

第三者から個人データの提供を受けるに際しては、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、氏名、住所等、個人データの取得の経緯の事項の確認を行わなければなりません。

なお、29条、30条の規定は、平成27年改正により新設されました。平成26年7月に発覚した大手通信教育会社ベネッセの個人データ大量漏えい事件において、盗み出された個人データが名簿業者に不正に売却され、さらに転売されていたことが発覚し、これを契機に、個人データのトレーサビリティ(追跡可能性)を確保するために新設されました。

⑤ 個人関連情報の第三者提供の制限等(31条)

第三者が個人関連情報を個人データとして取得することが想定されるときは、法定の事項について、あらかじめ個人情報保護委員会規則で定めるところにより確認することをしないで、個人関連情報を第三者に提供してはなりません。

令和2年改正により新設されました。提供元では個人を識別できないため個人情報ではないユーザーの属性情報や閲覧履歴等を、提供先において他の情報と照合して個人情報とされることを知りながら、提供する事業形態が出現しています。改正の前年に、就職サイト運営事業者が就活学生の内定辞退率を、提供先企業において特定の個人を識別することができることを知りながら提供したことが、社会的な問題になりました。

保有個人データの開示等に関するルール(32条~40条)はどのように規定されていますか

① 保有個人データに関する事項の公表等(32条)

ア 事業者は、保有個人データに関し、次の事項について、本人の知り得る状態(本人の求めに応じて遅滞なく回答する場合を含む。)に置かなければなりません。

ⅰ 事業者の氏名(名称)、住所、法人の代表者の氏名

ⅱ 全ての保有個人データの利用目的(21条4項1号から3号までに該当する場合を除く。)

ⅲ 開示等の請求に応じる手続(手数料の額を含む。)

ⅳ 保有個人データの適正な取扱いの確保に関し必要な事項として政令(10条)で定めるもの

イ 本人から保有個人データの利用目的の通知を求められたときは、遅滞なくこれを通知しなければなりません。ただし、ⅰ保有個人データの利用目的が明らかな場合、ⅱ21条4項1号から3号までに該当する場合は、利用目的の通知の必要はありません(2項)。

利用目的を通知しない旨を決定したときは、本人に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければなりません(3項)。

② 保有個人データの「開示」(33条)

ア 本人は、事業者に対し、本人が識別される保有個人データの電磁的記録の提供による方法その他の個人情報保護委員会規則で定める方法による開示を請求することができます(1項)。

個人情報保護委員会規則(30条)は、方法として、「電磁的記録の提供による方法、書面の交付による方法その他当該個人情報取扱事業者の定める方法とする。」と定めています。

平成27年改正前には「本人から、開示を求められたときは、開示しなければならない」と定められていましたが、改正により「開示を請求することができる」と定められ、開示について、裁判所に訴えを提起できる「請求権」であることを明確にしました。この点は、保有個人データの訂正等についても同様の改正がなされています。なお、開示請求の訴えを提起するためには「事前の請求」が要件となります。ただし、相手方が請求を拒んだときは、この要件の適用はありません(39条1項)。

イ 事業者は、開示請求を受けたときは、本人に対し、本人が請求した方法により、遅滞なく、保有個人データを開示しなければなりません。(本人が請求した方法による開示に多額の費用を要する場合や開示が困難である場合には、書面の交付による方法で開示できます。)

ただし、次のいずれかに該当する場合は、その全部又は一部を開示しないことができます(2項)。

ⅰ 本人又は第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合

ⅱ 個人情報取扱事業者の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合

ⅲ 他の法令に違反することとなる場合

ウ 事業者は、開示の請求に係る保有個人データの全部又は一部について開示しない旨の決定をしたとき、保有個人データが存在しないとき又は本人が請求した方法による開示が困難であるときは、本人に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければなりません(3項)。

エ 他の法令の規定により、本人に対し、保有個人データの全部又は一部を開示することとされている場合には、その保有個人データについては、開示に関する規定は適用されません(4項)。

オ 令和2年改正により、保有個人データの第三者への提供の記録(29条1項)及び第三者からの受取りの記録(30条3項)について開示請求が可能となりました(5項)。

③ 保有個人データの訂正等(34条)

ア 保有個人データの内容が事実でないときは、その保有個人データの内容の訂正、追加又は削除(「訂正等」)を請求することができます(1項)。

事業者は、訂正等の請求を受けた場合には、利用目的の達成に必要な範囲内において、遅滞なく必要な調査を行い、その結果に基づき、保有個人データの内容の訂正等を行わなければなりません(2項)。

なお、調査の結果、事実であることが確認されたとき等、訂正の必要がないことが確認されたときには訂正の必要はありません。

イ 事業者は、訂正等の請求に係る保有個人データの内容の全部又は一部について訂正等を行ったとき又は訂正等を行わない旨の決定をしたときは、本人に対し、遅滞なく、その旨(訂正等を行ったときは、その内容を含む。)を通知しなければなりません(3項)。

④ 保有個人データの利用停止等・第三者提供の停止(35条)

ア 保有個人データが利用目的による制限(18条)、不適正な利用の禁止(19条)の規定に違反して取り扱われているとき、又は適正取得(20条)の規定に違反して取得されたものであるときは、保有個人データの利用の停止又は消去(「利用停止等」)を請求することができます(1項)。

保有個人データが第三者提供の制限(27条1項、28条)の規定に違反して第三者に提供されているときは、第三者への提供の停止を請求することができます(3項)。

イ 事業者は、保有個人データの利用停止等・第三者提供の停止の請求を受けた場合に、請求に理由があることが判明したときは、違反を是正するために必要な限度で、遅滞なく、保有個人データの利用停止等・第三者提供の停止をしなければなりません。

ただし、利用停止等に多額の費用を要する場合その他の利用停止等・第三者提供の停止をすることが困難な場合であって、本人の権利利益を保護するため必要なこれに代わるべき措置をとるときは、この限りではありません(2項、4項)。

ウ 令和2年改正により、利用停止等、第三者提供の停止の対象が拡大され、次のいずれかの場合に利用停止等又は第三者提供の停止を請求することができるようになりました(5項)。

ⅰ 保有個人データを利用する必要がなくなった場合

ⅱ 重大な漏えい等の事態が生じた場合

ⅲ 本人の権利又は正当な利益が害されるおそれがある場合

この請求を受けた場合には、事業者は2項、4項と同様の規律に従う必要があります(6項)。

エ これらの規定による請求に係る保有個人データの全部・一部について利用停止等又は第三者提供の停止を行ったとき又は利用停止等又は第三者提供の停止を行わない旨の決定をしたとき等は、本人に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければなりません(7項)。

⑤ 措置についての理由の説明(36条)

上記の措置について、本人から請求された措置の全部・一部について、請求された措置をとらない旨を通知する場合又はその措置と異なる措置をとる旨を通知する場合には、本人に対し、その理由を説明するよう努めなければなりません。

⑥ 開示等の請求等に応じる手続(37条)

ア 開示等の請求等に関し、請求等を受け付ける方法を定めることができます。この場合には、本人は、その方法に従って開示等の請求等を行わなければなりません(1項)。

政令(12条)は、開示等の請求等を受け付ける方法として次の事項を定めています。

ⅰ 開示等の請求等の申出先

ⅱ 開示等の請求等に際して提出すべき書面(電磁的記録を含む。)の様式その他の開示等の請求等の方式

ⅲ 開示等の請求等をする者が本人又は代理人であることの確認の方法

ⅳ 手数料の徴収方法

イ 開示等の請求等に関し、その対象となる保有個人データ又は第三者提供記録を特定するに足りる事項の提示を求めることができます。この場合には、本人が容易かつ的確に開示等の請求等をすることができるよう、保有個人データ又は第三者提供記録の特定に資する情報の提供その他本人の利便を考慮した適切な措置をとらなければなりません(2項)。

開示等の請求等は代理人によってすることができます(3項)。

開示等の請求等に応じる手続を定めるに当たっては、本人に過重な負担とならないよう配慮しなければなりません(4項)。

⑦ 手数料(38条)

33条2項の利用目的の通知を求められたとき又は33条1項の開示の請求を受けたときは、その措置の実施に関し、手数料を徴収することができます。手数料を徴収する場合は、実費を勘案して合理的であると認められる範囲内において、その手数料の額を定めなければなりません。

⑧ 事前の請求(39条)

開示等の請求に係る訴えを提起しようとするときは、その訴えの被告となるべき者に対し、あらかじめ、開示等の請求を行い、かつ、その請求の到達した日から2週間を経過した後でなければ、その訴えを提起することができません。ただし、訴えの被告となるべき者がその請求を拒んだときは、この限りではありません。

⑨ 個人情報取扱事業者による苦情の処理(40条)

個人情報取扱事業者は、個人情報の取扱いに関する苦情の適切かつ迅速な処理に努めなければなりません(40条)。

個人情報取扱事業者は、前項の目的を達成するために必要な体制の整備に努めなければなりません。

「匿名加工情報」に関してはどのように規定されていますか

① 平成27年改正で「匿名加工情報」に関する規定が設けられました。

「匿名加工情報」の規定が設けられる前に、個人情報の氏名、生年月日、住所等を削除、マスキング、置換等して、その情報だけでは個人を判別することができないようすることを「匿名化」と称する場合がありましたが、「匿名加工情報」はそれとは全く異なるもので、法令に基づいた加工を行うことが必要です。

改正前から、個人情報を復元できないように加工して特定個人を識別できなくなったものは、個人情報ではなくなり、いわゆるビッグデータとして、本人の同意を得ないで利活用できると考えられていました。しかし、JR東日本がスイカの個人情報を加工し匿名化して、ビッグデータとして情報分析会社に提供する計画があることが報道されると、多くの人から不安の声が寄せられたことから、JR東日本はこの計画を取り止めました。

この事例を契機に、個人情報の利活用を促進する観点から、個人情報を復元できないように加工して、特定の個人情報を識別することができなくして、個人の権利利益侵害が生じない匿名加工情報としての規律を明確にするために規定が新設されました。匿名加工情報の制度は、個人情報をビッグデータとして利活用するために、高度の匿名化加工方法や匿名加工情報取扱事業者等の規律を定めるものです。

② 匿名加工情報(2条6項)とは、個人情報の区分に応じて定められた措置を講じて、特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報であって、個人情報を復元することができないようにしたものをいいます。

匿名加工の方法(2条6項)は、次のとおりです。

ⅰ 氏名、生年月日その他の記述等の個人情報については、個人情報に含まれる「記述等の一部を削除」すること(1号)

ⅱ 個人識別符号が含まれる個人情報については、個人情報に含まれる「個人識別符号の全部を削除」すること(2号)

「削除すること」には、復元することができる規則性を有しない方法により他の記述等に「置き換える」ことが含まれます。

③ 匿名加工情報取扱事業者等の義務)として、次のとおり規律しています。

ⅰ 匿名加工情報の適正な加工(43条1項)

匿名加工情報を作成するときは、特定の個人を識別すること及びその作成に用いる個人情報を復元することができないようにするために必要な規則の基準に従い、個人情報を加工をしなければなりません。

ⅱ 加工方法等情報の安全管理措置(43条2項)

匿名加工情報の作成に用いた個人情報から削除した記述等、個人識別符号及び加工の方法に関する情報の漏えいを防止するために必要な規則の基準に従い、安全管理のための措置を講じなければなりません。

ⅲ 匿名加工情報の作成時の公表(43条3項)

匿名加工情報に含まれる個人に関する情報の項目を公表しなければなりません。

ⅳ 匿名加工情報の第三者提供(43条4項、44条)

匿名加工情報を第三者に提供するときは、あらかじめ、第三者に提供される匿名加工情報に含まれる個人に関する情報の項目及びその提供の方法について公表するとともに、第三者に対して、提供に係る情報が匿名加工情報である旨を明示しなければなりません。

ⅴ 本人識別行為の禁止(43条5項、45条)

匿名加工情報の作成に用いられた個人情報に係る本人を識別するために、匿名加工情報を他の情報と照合してはなりません。

ⅵ 匿名加工情報の安全管理措置等(43条6項、46条)

匿名加工情報の安全管理のために必要かつ適切な措置、匿名加工情報の作成その他の取扱いに関する苦情の処理その他の匿名加工情報の適正な取扱いを確保するために必要な措置を自ら講じ、かつ、措置の内容を公表するよう努めなければなりません。

仮名加工情報に関してはどのように規定されていますか

① 令和2年改正で「仮名加工情報」に関する規定が設けられました。平成27年改正で「匿名加工情報」を設けましたが、事業者が組織内部で利活用するために、個人情報から氏名、生年月日等を削除等し、匿名加工情報の作成には及ばない程度の加工をしていることから、データ単体から特定の個人を識別できないようにする「仮名化」の加工を施して、組織内部で利活用するための新たな制度が設けられました。

② 仮名加工情報(2条5項)とは、個人情報の区分に応じて各号に定める措置を講じて、他の情報と照合しない限り特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報をいいます。

仮名加工の方法(2条5項)は、次のとおりです。

ⅰ 氏名、生年月日その他の記述等の個人情報については、個人情報に含まれる「記述等の一部を削除」すること(1号)

ⅱ 個人識別符号が含まれる個人情報については、個人情報に含まれる「個人識別符号の全部を削除」すること(2号)

「削除すること」には、復元することができる規則性を有しない方法により他の記述等に「置き換える」ことが含まれます。

③ 仮名加工情報取扱事業者等の義務

ア 個人情報取扱事業者の作成等に関する義務(41条関係)

ⅰ 仮名加工情報の適正な加工(1項)

仮名加工情報(仮名加工情報データベース等を構成するものに限る。)を作成するときは、他の情報と照合しない限り特定の個人を識別することができないようにするために必要な規則の基準に従い、個人情報を加工しなければなりません。

ⅱ 削除情報等の安全管理措置(2項)

仮名加工情報を作成したとき、又は仮名加工情報及び削除情報を取得したとき、削除情報等の漏えいを防止するために必要な規則の基準に従い、削除情報等の安全管理のための措置を講じなければなりません。

イ 仮名加工情報取扱事業者の仮名加工情報の取扱に関する義務(41条関係)

ⅰ 利用目的による制限(3項)

法令に基づく場合を除くほか、特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、仮名加工情報(個人情報であるものに限る。)を取り扱ってはなりません。

ⅱ 利用目的の公表(4項)

仮名加工情報についての21条(利用目的の通知又は公表)の規定の適用については、通知は必要なく「公表する」ものとします。

ⅲ 利用する必要がなくなった場合の消去(5項)

仮名加工情報である個人データ及び削除情報等を利用する必要がなくなったときは、個人データ及び削除情報等を遅滞なく消去するよう努めなければなりません。

ⅳ 第三者提供の禁止等(6項)

法令に基づく場合を除くほか、仮名加工情報である個人データを第三者に提供してはなりません。

ⅴ 本人の識別行為の禁止(7項)

仮名加工情報の作成に用いられた個人情報に係る本人を識別するために、仮名加工情報を他の情報と照合してはなりません。

ⅵ 本人への連絡等の禁止(8項)

電話、郵便等、電報、ファクシミリ、電磁的方法を用い、又は住居を訪問するために、仮名加工情報に含まれる連絡先その他の情報を利用してはなりません。

なお、仮名加工情報、仮名加工情報である個人データ及び仮名加工情報である保有個人データについては、17条2項(利用目的の変更)、26条(漏えい等の報告等)及び32条から39条(保有個人データに関する事項の公表等及び開示等)までの規定は適用しません(9項)。

ウ 仮名加工情報取扱事業者の仮名加工情報の第三者提供の制限等(42条関係)

法令に基づく場合を除くほか、仮名加工情報(個人情報であるものを除く。)を第三者に提供してはなりません(1項)。

個人情報取扱事業者等の義務の適用除外規定とはどのような規定ですか

個人情報取扱事業者等のうち以下に掲げる者については、その個人情報等を取り扱う目的の全部又は一部が以下に規定する目的であるときは、第4章の個人情報取扱事業者等の義務等の規定は、適用しません(57条)。

① 放送機関、新聞社、通信社等の報道機関等 報道の用に供する目的

② 著述を業として行う者 著述の用に供する目的

③ 宗教団体 宗教活動の用に供する目的

④ 政治団体 政治活動の用に供する目的

適用除外規定は、憲法が保障する自由との関係から、行政からの不当な干渉を受けるおそれがないように、報道機関等が本来の活動目的で行う個人情報の取扱いについて、第4章の個人情報取扱事業者等の義務等の規定は、適用しないこととされています。

令和3年の改正前には、「大学その他の学術研究を目的とする機関、団体等」についても適用を除外していましたが、学術研究分野を含めたEUのGDPR(一般データ保護規則)の個人データの域外移転に関する十分性認定への対応を目指し、学術研究に関する個人情報保護法の適用除外規定を見直し、一律の適用除外ではなく、義務ごとの例外規定として、18条3項(利用目的による個人情報取扱い制限の適用除外)、20条2項(要個人情報適正取得の事前の本人同意の除外)、27条1項(個人データの第三者提供の事前の本人同意の除外)が規定されています。